今年の夏の甲子園は、慶應義塾高校が107年ぶり2度目の優勝を手にして幕を閉じた。「エンジョイ・ベースボール」とともに話題になったのは、「髪の長さ」である。例年以上に長髪が目立ったからか。
日本高野連の調査では、丸刈りの決まりがある学校は約4分の1。5年前の4分の3からは大きく減っている。丸刈りにしている理由として、「伝統」「野球に専念してほしい」「丸刈りの方が楽」などが挙げられる。
丸刈りの歴史を調べてみた。1873年、徴兵令が公布され軍隊では衛生上の理由に加え規律を保つ意味があったという。やがて学校でも定着し、戦時中には一般の国民にも浸透していった。
丸刈りと言えば、小生にも思い出がある。初めてバリカンを当てた時の恥ずかしさと誇らしさ、そして長髪が許された学校の生徒へのうらやましさは今でも記憶の片隅にある。中学生になれば男子は丸刈りが当たり前の時代、教師として丸刈り校則が生徒指導に有効だと信じて違反する生徒の指導に明け暮れた日々もあった。県内O市では1980年代中ごろ管理教育への批判の中で丸刈り校則の見直しの動きが生まれ、90年代前半には丸刈り校則が全廃された。
少子高齢化が進行し、グローバル化、情報化、技術革新が進展するこれからの社会では、主体的に判断し、問いを自ら立て解決する力が求められている。そんな中、学校現場では、互いに認め合うための配慮や考え方、行動を促す教育(ダイバーシティ教育)が注目されている。ダイバーシティ教育を進める中で、子供たちに「らしさ」や「偏見」を押し付けるようなことがあってはならない。
野球は徴兵令公布とほぼ同時期に米国から伝わり、丸刈りと同じ時代を歩んできた。150年を経て球児たちははつらつと白球を追っていたが、中には野球は続けたいが丸刈りに悩んでいる球児もいるかもしれない。丸刈りでも長髪でもよい。「でなければならない」は受け入れ難い。今が転換期かも知れない。