多文化共生社会を生き抜く生徒 知立市立知立南中学校

多文化共生社会を生き抜く生徒 知立市立知立南中学校
タブレットの翻訳機能を使って、生徒と教師が対話している様子
【協賛企画】
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研究について

 本校にはブラジルやフィリピンなど、125人の外国にルーツをもつ生徒が在籍している(2023年4月)。外国にルーツを持つ生徒へは、日本語の習得状況に応じて支援をしている。それにより、日本人生徒を含む生徒同士の関わり合いが活発になり、多様な考えや価値観に触れ、多文化共生社会で求められる資質を育むことができると考えた。

 目指す生徒像の「多様な」とは、国籍だけでなく、性別や年齢、宗教や成育環境など「個」による幅広い立場からの考えを指す。また、「上手なコミュニケーション」とは、(1)自分の考えを持つ(2)他者と考えを伝え合う(3)自他の違いに気付く(4)質疑応答、付け足し(5)考えを再構築の流れを繰り返しながら、思考を広げたり、深めたりする活動と定義した。

仮説と手だて

 本研究では「外国にルーツを持つ生徒を含む誰もが授業に参加でき、生徒が多様な考え・価値観に触れられるようにするなど、授業の工夫・改善をする」と仮説を定めた。そして、その手だてとして「JSLカリキュラムに基づく日本語支援の視点を一斉授業にも転用する」「多文化共生に向けた全体支援の視点から一斉授業の工夫・改善を行う」「一斉授業での学習活動に参加する力を育成するため、来日歴や日本語習得状況に応じて日本語の取り出し支援を行う」を設定した。

 手だてにある「JSLカリキュラム」とは、外国にルーツを持つ生徒が、日本語習得を通して、学校での学習活動に参加するための力を育成するカリキュラムで、「自律」「情意」「理解」「表現」「記憶」の5つの視点からの授業改善を指す。また、「多文化共生に向けた全体支援」とは、国際交流基金日本語国際センター所長の佐藤郡衛先生の考え方で、「自己肯定感の育成」「外国に対する正確な知識を提供し、科学的認識力を高める」「関わる力の育成」「多様な考えを育てる」の4つの視点からの支援を言う。

実践の様子

【タブレットの翻訳ツールを用いての自立支援】

 中1社会科地理分野、南アメリカ州の授業では、「開発」と「環境」の両方の視点から、持続可能な開発について話し合った。授業では、タブレットの翻訳機能を用いて、ポルトガル語に翻訳して発問や内容を伝えた。また、タブレットの翻訳機能の使い方を指導することで、分からない語句を自分で翻訳したり、日本語に翻訳して友達に聴いたりすることができた。

【生徒同士の関わり合い】

 「個」↓「ペア・グループ」↓「全体」と、段階的に関わり合う場を設定した。また、生徒同士の関わり合いがより有効になるよう意図的な座席配置を行った。中1道徳「あいさつ」をテーマにした授業では、日本語理解が十分でないため、なかなか授業に参加できていなかった生徒が、同じ国籍の生徒の助けを借りて、グループでの意見交流の場で、自分の考えを伝えることができた。

終わりに

 今後はますます増加するであろう外国にルーツを持つ生徒への対応、外国にルーツを持つ生徒へ日本人生徒がどう関わっていくかが特に課題となる。今後も、「多文化共生社会を生き抜く」生徒を目指して、職員全員で研究を進めたい。

 (文責・福井信也校長、執筆・大塚悠矢研究主任)

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