教科構成の在り方 組み替え、系統性の観点から研究を(工藤文三)

教科構成の在り方 組み替え、系統性の観点から研究を(工藤文三)
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教科等の構成の基本的課題

 4月から実施される教育課程における各教科等の数は、小学校1・2学年8、3・4学年11、5・6学年12となっている。中学校は各学年とも12となっている。1958年の教育課程改訂を端緒に、生活科、総合的な学習の時間、小学校外国語活動、小学校外国語が、それぞれ89年以降の改訂時に追加され、今日に至っている。中学校で追加されたのは総合的な学習の時間のみである。

 授業時数との関係でみると、総授業時数が漸減傾向にある中で、教科等の数は増加してきたのが分かる。各教科の授業時数も縮減され、教科内容の規模が以前に比べて小さくなっている。

 特に小学校の音楽や図画工作、中学校の音楽、美術、技術・家庭の授業時数は相対的に少なくなっている。このような教育課程の姿に到達したのは、時々の改訂で教科等が追加されてきたことによる。

 以上のように、追加され数が増えた教科等で教育課程を編成することは、次のような課題につながると考える。

 一つは、例えば生活科を中学年でどの教科に引き継ぐかがあいまいであるように、教育内容の系統が不明確になっている点である。また、技術・家庭の技術分野と高校の教育課程との接続も同じ課題である。

 第二に、多くの教科で構成されるため、学年全体でどのような資質・能力を育てるのか、その内容を収斂(しゅうれん)しにくい点である。新学習指導要領では「教科等横断的な視点から教育課程の編成を図る」としているが、数多くの教科を横断するのは容易ではない。

 第三に、規模が小さくなった教科は、教育効果を発揮しにくくなっている点である。

 第四に、評価が学年および教科ごとに行われる仕組みのため、学力が細分化されて示される点である。

これまでの提言と対応

 教科等の構成の在り方については、96年中教審答申でその検討の必要が示された。

 答申では、教科等の構成の在り方は「不断に見直していく必要がある」こと、「この問題」は「総合的な検討を要する問題」であり、「早急に検討に着手する必要がある」とした。

 検討の場として、教育課程審議会に「常設の委員会を設ける」こと、調査研究に当たっては、国立教育政策研究所をはじめさまざまな機関の研究成果を反映することを求めていた。

 国立教育政策研究所では、教科等の構成と開発に関するプロジェクト研究を進め、99年度から2006年度まで合計25点の報告書を作成している。内容は、研究開発学校における教育課程の開発内容の整理や、諸外国の教育課程の仕組みなどの情報収集が中心であった。

具体的な研究課題

 各教科等の改廃の提案は、それぞれの教科に長い教育実践の蓄積があるため容易ではない。ただ、次のような課題を設定して、思い切った提案も含めて研究を進める必要がある。

 ①小学校、中学校と学校種を区別せず、義務教育9年間を通した教科等の構成の在り方

 ②教育課程を教科等の集合体としてだけではなく、領域として区分する方法論

 ③相対的に規模の小さい教科等の設定の在り方と教科等の数の削減方法

 ④小学校低学年の生活科を引き継ぐための教科等の構成

 ⑤中学校技術・家庭の技術分野につながる、小学校や高校の教育内容の設定の可否や在り方

 ⑥高校情報につながる中学校、小学校の情報教育の内容の在り方

 ⑦教科等の内容の組み替えや履習方法も踏まえた教科等の再構成

 研究方法については、ある一定の原理に基づいて演繹(えんえき)的に教科等の構成を導くのは難しい。現行の教科等の、指導内容を組み替えながら、新しい教科等の構成を提案していく方法が現実的と考える。

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