特例的な教育課程編成 指導計画の接続が鍵(工藤文三)

特例的な教育課程編成 指導計画の接続が鍵(工藤文三)
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 周知のように、5月15日付けで、文科省は「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた学校教育活動等の実施における『学びの保障』の方向性等について」とする通知を発出した。通知の中で、今年度当初予定していた内容の指導を年度内に終えることが困難である場合の、「特例的な対応」「補完的な取組」として次の2点を挙げた。「次年度以降を見通した教育課程編成」と「学校の授業における学習活動の重点化」である。

 ここでは、「次年度以降を見通した教育課程編成」について今後どのような点に留意して進めるか、整理してみたい。

 通知には、特例的な対応は、今年度在籍している最終学年以外の児童生徒を対象とすること、「2021年度または22年度までの教育課程を見通して検討を」行うこと、また、「学習指導要領において指導する学年が規定されている内容を含め、次学年または次々学年に移して教育課程を編成する」としている。

 例えば、小学校5学年の場合、21年度を含めた2年間、それ以外の学年は、21・22年度を含めた3年間を見通した教育課程の編成を行うことになる。

いつ頃見通しを立て計画するか

 複数年度にわたる教育課程の編成の必要と計画についてはいつ頃になって開始するのか。少なくとも10~11月頃には、今年度の教育課程の実施状況を点検し、年度内に実施可能な授業時数も踏まえて、見通しを立てる必要がある。

 21年1月には、年度内の学習と繰り越す可能性のある内容とを整理する。その際に、最終学年に次ぐ学年は、指導内容の繰り越しは次年度にのみ限られているので、早めの計画を作成する。また、最終学年に次ぐ学年以外の学年は、次年度と次々年度に繰り越しが可能である。

 ただ、最初から2年度を見通すのではなく、次年度への繰り越しのみで終えることも考慮したい。また、次々年度に繰り越す内容を、今年度末までに決定するのは不確定な状況もあり、難しいのではないか。次々年度までの繰り越しは、感染症の状況次第で用いることになると思われる。

教育課程の編成に当たって

 一般的には、年間指導計画のうち、取り扱うことができなかった年度末の一定の週数に当たる内容を、次年度の始めに移行することが順当と考えられる。この場合、次の点への配慮が必要と考える。

 1つは、各学年の年間指導計画の連続性、接続の部分を点検することである。平素は、年間指導計画は1年で完結するものとして作成されている。今回の繰り越しに際しては、学習の接続を意識して、学年をまたぐ部分の精査が必要である。

 第2に、繰り越し内容を担当する教員は前学年の担当とは異なることを想定して、分かりやすい指導計画にしておく。年度末と年度初めにおける指導計画の引き継ぎは綿密に行う必要がある。

 第3は、これまでの休校や分散形式による学習の補充や定着のための学習の扱いである。今回の特例は学年内に「指導を終えることが難しい場合」とされているが、学習のより確実な定着を目指す趣旨も含めて、繰り越しを検討すべきと考える。

円滑な実施に向けて

 繰り越しの内容を検討する際には、最終的には学習指導要領の内容が基礎になる点を踏まえることである。履習内容のよりどころは学習指導要領であり、保護者への説明に当たっては、学習指導要領および文科省の通知を根拠に説明することが必要である。

 評価および指導要録の取り扱いをどうするか。文科省はまだ方向を示していないようであるが、2020年度および繰り越し内容を含む年度の指導要録については、特例的な取り扱いとなる点を付記することが考えられる。

 転入・転出する児童生徒への対応については今回の通知には触れられていない。当該の学校間で指導の状況を連絡する方法の検討が必要であろう。

 最後に、通知は高等学校も含めているが、高等学校は学年ごとに科目を配置しており、学年をまたいだ繰り越しの具体的な在り方については、別途検討する必要がある。

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