ポストコロナの学校教育 問われる課題対応力(工藤文三)

ポストコロナの学校教育 問われる課題対応力(工藤文三)
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学びの基盤としての家庭の経済状態

 コロナ禍がいつまで続くか予断を許さない状況が続いている。一方、ポストコロナの社会や生き方を論じる書籍も見られるようになった。ポストコロナの学校教育の姿について考えてみたい。

 7月に厚生労働省が公表した国民生活調査によると、2018年の子供の貧困率は13.5%で約7人に1人が相対的貧困の状態にあることが分かった。子供がいる現役世帯のうち、大人が2人以上の世帯では子供の貧困率は10.7%であるのに対して、大人が1人の世帯では48.1%となっている。いかに1人親家庭の収入が相対的に低いかが分かる。

 一方、今回のコロナ禍において、飲食店や宿泊業の中には倒産する事業者も増えている。事業者の都合で離職せざるを得なかった人の増加も見られる。大企業においても、売り上げや利益が大幅に減少する例も日々報告されている。需要の減少に伴い、新規採用を抑制する企業も見られる。

 このような状況がどのくらいの期間続くかは不透明であるが、しばらくの間、家計の収入が不安定になったり、減少したりすることが予想される。

 学びの基盤には、安定した家庭生活が欠かせない。就学援助や高校生に対する授業料の減免、就労支援その他、既に制度化されている支援が、必要としている世帯に確実に届くようにする取り組みを進めことが必要と考える。

学校保健の在り方

 学校における感染症の予防や対策については、学校保健安全法や同施行規則で仕組みが定められ、文科省より詳細な解説もなされ全国的な体制がとられてきた。今回の新型コロナウイルス対応については、文科省の通知および各教育委員会の支援の下、各学校で懸命の取り組みが進められている。コロナ以降の時期においては、従来の体制と今回の取り組みの経験を合わせて吟味し、今後の学校保健の在り方が模索されていくと考える。

教育内容 各教科で感染症を学ぶ

 新しい学習指導要領に基づく教育課程は始まったばかりで、教育課程の基準に基づく指導事項に変更はないことが予想される。ただ、総則にも記載があるように「現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を、教科等横断的な視点で育成」するための取り組みの推進は可能である。

 東日本大震災および引き続く豪雨災害が防災・安全教育の取り組みを促したように、感染症と生活や社会の在り方についての実践が想定される。感染症というテーマを各教科等の見方・考え方を働かせながら捉えたり、考察したりする学習が展開されよう。保健や公衆衛生という観点からだけでなく、経済や政治、歴史など多角的に学ぶ機会が期待される。

教育方法 ICTのみでは不十分

 学校の休業中、家庭における学習の方法としてオンライン授業が注目された。ただ、送信側の教材の作成や配信、受信側の端末や通信環境など、さまざまな課題があり安定して学習をサポートする体制とは成り得なかった。

 一方、1人1台端末や通信ネットワークの整備などのGIGAスクールに向けた施策がスタートしている。今後環境整備が進められ、教材の充実や教員のICT活用が定着してくると、児童生徒の日常の学習にICTの活用が浸透し、不可欠になってくることが想定される。このような状況になってくると、子供たちの家庭における学習にもICTが浸透してくることが想像できる。

 翻って、コロナによる休校中の課題は、ICTのみの授業では十分でないことが確認された。当然であるが、児童生徒同士、児童生徒と教員それぞれが、相互の関係と交流を通じて学びながら、子供は育っていく。ICTは学びのツールであることを忘れてならない。

 ポストコロナの社会においては、家庭の経済的基盤を安定したものにしていくことを前提に、これまで蓄積してきた学校教育の善さを踏まえつつ、より対応力を高める教育の在り方が求められるといえよう。

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