高水準な研究を支えるOISTの保育施設や授乳室(鈴木崇弘)

高水準な研究を支えるOISTの保育施設や授乳室(鈴木崇弘)
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 沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、今年ノーベル賞受賞者が生まれたように、研究水準の高さで世界的にも注目されている(筆者はOISTで滞在研究の機会をいただいた。機会を提供していただいたピーター・グルース学長をはじめとして、OISTおよびその教職員の皆さん方に感謝申し上げたい)。だが、優秀な研究者や研究の体制だけで、研究水準が高いのではない。実は、研究者が研究に専念できるさまざまな工夫や施設が存在しているのだ。本記事では、その一つの象徴的施設を紹介したい。

認可外保育施設CDC

 それは、「てだこチャイルドデベロップメントセンター(CDC)」と呼ばれる、OIST学内の認可外保育施設だ。てだこは「太陽の子」を意味する沖縄の方言で、CDCでは月齢2カ月の乳幼児から就学前の6歳児までの保育を担うとともに、学童(After School)プログラムも提供している。

 親であるOISTの教職員や院生は、自分の子どもをここに預けることで、安心して研究・学業や仕事に専念できるのだ。

 OISTの教職員や院生は、53カ国の国々(11月現在)から集まってきており、人種も国籍なども実に多様。当然、その子どもたちも多様なバックグラウンドを有する。それは園児構成にも見てとれる。現在、園児総数は161人だが、日本人の保護者を持つ園児は56人、外国籍の保護者を持つ園児は55人、日本と外国籍の保護者を持つ園児は50人(9月26日現在)だ。

 またOISTでは英語が公用語で、教職員や院生のほとんどは英語能力に支障はないが、そのパートナーや子どもたちは必ずしも英語が得意とは限らない。ましてや、多くの子どもたちやパートナーなどにとっては、日本・沖縄という母国ではない環境で生活しているのだ。CDCは、そのような異なる言語や居所環境の子ども・パートナーらとコミュニケ―ションを取りながら、保育や教育に対応している。

 しかも海外からの教員・研究者などは2年から5年で入れ替わることが多く、またほとんどの保育所は月齢6カ月からの乳児の保育のみであるのに対して、CDCでは月齢2カ月からの乳児を受け入れるなど、柔軟な対応を取っている。

 このように、CDCは言語的困難への対応、受け入れ期間の柔軟性、また多種多様なバックググラウンドへの対応や対象者にニーズにおいて、非常に柔軟に対応・工夫している。

 またCDCの各組には日本語および英語の両クラスルームスタッフが配置され、園内では確実に日英での保育・教育が適切になされるような人材配置がされている。

 そのようなCDCの多様性対応の保育・教育の一面は、スタッフ構成にも表れている。

 CDCのスタッフは、管理事務の職員6人および保育従事者49人で、総数55人。保育従事者の人的構成は、日本国籍35人、外国籍14人(9月26日現在)となっている。このような人的構成があるからこそ、高度な柔軟性が求められている環境下でも、多様なバックグラウンドの園児にも対応できているといえるだろう。

CDCの施設的な対応・工夫

 CDCは、このような多様な子どもたちが、安心かつ安全に保育されるように、施設にも工夫がある。例えば建物は、その内部と外観では大きな違いがある。

 外観はプライバシーや安心および安全性が守られているが、内部は開放的で、オープンな感じが満ち溢れている。つまり内と外のメリハリの配慮がされているのだ。

 各教室も、園児の年齢や成長に応じた内部のレイアウトや施設などにも工夫や対応がなされている。そして教室もお互いが見通せるようになっていて、開放感と安心感が維持されている。

 そして授乳室(OISTで活動や研究をしつつ、頻繁に授乳する方も多い)や調理室などの、園児の生活が円滑に維持されるためのさまざまな施設もある。

地域・研究・教育にも貢献

 CDCは学童保育も行っている。現在は施設のキャパの問題などもあり、OISTのメインキャンパス外のシーサイドハウスで実施されているが、日英のバイリンガル教育による多様なバックグラウンドの子どもたちが、多様な教員による国際的な教育を受けられるので、外部からの参加の問い合わせもあり、沖縄県内でも人気の高い施設になっている。

 OISTの教員などの中には、このような優れた保育・教育施設があるので、「OISTで研究をすることを決めた」という方もいるくらいだ。このことからも、CDCは、OISTの高い研究水準に貢献しているといえる。

 またCDCで行われている保育・教育の経験や知見は、今後ますます多様化することが予想される日本社会の教育の今後を考える上で、非常に参考になるといえるだろう。

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