来年度こそ、水泳指導は民間委託へ(庄子寛之)

来年度こそ、水泳指導は民間委託へ(庄子寛之)
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寒くても暑くても水泳はできない

 今年の夏が終わる。9月から体育の授業で水泳指導をする学校は、どれだけあるのだろうか。この4月から北は青森、南は沖縄までの学校や教育委員会で研修や授業をさせていただいた。その中で、多くの学校は1学期に水泳指導を終えていた。

 コロナ前までは9月まで水泳指導をしていた学校がほとんどだと聞いている。やはり、この5年の変化は激しい。実際に業務が減っているかは別の問題であるが、働き方改革は進んでいるともいえるだろう。

 今の時代の水泳指導は、暑くても寒くてもできない。もちろん雨が降ってもできないから、できる確率はせいぜい6、7割といったところだろう。寒かったり、雨が降ったりしてできないのなら子供たちも諦めがつく。しかし、ここ数年は暑くても入れないのである。

 7月の終わり、「今日は暑さ指数が基準値を超えているので、プールには入れません。休み時間も教室で静かに遊びましょう」と放送が入る。問題は入れないことだけでない。入りたかった子供たちは、楽しみだった水泳学習もできなければ、外で遊ぶこともできない。そんな不満が、授業でも態度に出てしまうのは仕方ないことだろう。

水質の管理に、かなりの時間が取られる

 つらいのは子供だけではない。教員の負担は、計り知れないほど大きい。毎日の水質管理のために、プールロボットを入れたり出したり、塩素を適切に入れたりする。勤務時間前からごみを取り、日が沈む勤務時間外に、重いプールロボットを取り出し、ごみを取り、洗う。

 そこまでして毎日水質管理をしているのに、水泳学習をする時間はせいぜい10時間程度である。年間1000時間以上ある教育活動でたったの10時間程度である。

 10時間程度では、泳ぎはうまくなれない。毎週泳いでいる子と、初めて泳ぐ子が混在している中、指導の仕方も難しい。多くの学校は学年の教員と子供たちで水泳学習を行う。40人に1人の担任で指導できるはずもない。

 どこの水泳クラブであっても、水泳専門の講師が数人の子供たちを教えている。そんな中で水泳学習を実施することはかなり難しいのである。

 また、その前に行う救急救命講習の準備、実施などの手間を、教員ではない人たちはどこまで知っているのだろうか。春に運動会を行う学校は、終わり次第、救急救命講習を行うが、消防署に4月に電話をしても、なかなか予定が合わないのが現状である。忙しい中で、研修をすることを負担に感じている教員も多い。

市民プールやスポーツクラブへの民間委託への移行と課題

 意見を言わせていただくと、教育委員会は、今の段階で来年の水泳学習を民間委託すべきだ。理由は3つある。

 まずは、教員の負担だ。先に書いた通り、この負担がなくなることで、生まれた時間を教材準備や子供と触れ合う時間に代えることができる。

 次に、水泳施設の老朽化だ。今から老朽化したプールを修繕するのに何千万のお金を使うのであれば、民間委託することで予算を生むことができる。

 最後に、地域の産業への貢献だ。民間委託とはいえ、地元のプールやスポーツジムにお金を落とすことになる。そこで生活している人たちや街のためになるはずだ。

 そこで最後に課題になるのは、市民プールまで運んでくれるバスの運転手問題である。ここは、なるべく早めに準備をすべきだ。地元の旅行会社に連絡を取り、確保できると良い。都市部では、歩いて行くこともできるが、暑い中の熱中症リスクを考えれば、バスが良いだろう。バスに乗るだけでも、子供たちは喜ぶはずである。

 働き方改革は待ったなしである。その中の一つに、ぜひこの時期に水泳学習の民間委託を話題にしてほしい。教員みんなで声を上げることも大切だと考える。

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