信州大学大学院教育学研究科研究員、オスロメトロポリタン大学客員研究員、ウプサラ大学客員研究員。専門は比較教育学、保育・幼児教育
北欧のあちこちの書店や図書館にはマンガコーナーがある。日本の文化に興味を持ち、日本語を学びたいという子どもや若者にもよく出会う。しかし、それはわりと最近の現象だ。まだスウェーデンでマンガを手に入れるのが難しかった2000年前後に、一人の少女が日本のアニメに魅了され、後に日本に渡り、そして現在は漫画家として活躍している。「北欧女子」シリーズの著者、オーサ・イェークストロームさんだ。
オスロ郊外にあるハーレベイエン幼稚園は、ノルウェー国内の環境認証を受けた公立園だ。ニワトリを飼ったり、残飯を堆肥にして野菜を育てたりしており、入園希望者は多い。人気の秘密は、自然と関わる魅力的な活動に加えて、その活動に周りの大人を巻き込む求心力にもありそうだ。
「授業でよりアクティブな学習をさせてほしい」と求める学生。それに対して「小グループで活発な話し合いを予定していたのに、学生がほとんど来ないのが現状」と応じる教員。ノルウェーのオスロ首都大学の教員養成学部で行われた、ランチディベートでのやりとりだ。教員と学生合わせて100人ほどが集まり、サンドイッチを片手に、大学の授業について意見を交わし合った。
先月公表されたOECD(経済協力開発機構)の「国際学習到達度調査(PISA)」(2022年実施)では、ノルウェーは3分野全てで過去最低の成績を記録した。教育大臣は「深刻な状況だ」と懸念を表明したが、この結果はもっと早く予測できたかもしれない。もしナショナル・テストが正しく集計できていたなら――。
ノルウェーでも不登校が問題になっている。正式な統計はないが、基礎学校(日本の小中学校に相当)における不登校の数は3万人以上とも言われており、これは全児童生徒数の5%ほどに当たる。データや研究の不足が指摘される中、非営利団体であるシルケンス・ビーミションは不登校の子供たちの声を集め、レポート『不登校について話す』を発表した。
スウェーデンの子どもたちの夏休みは長く、6月初旬から8月中旬まで2カ月以上ある。年度の区切りでもあるため、宿題はない。スウェーデン人の多くは家族で海外旅行に行ったり、森の中のサマーハウスに滞在したりして、街中は閑散とする。しかし、街にも子連れで賑わう集う場所があった。
スウェーデンの教育法では、学校教育は原則無料と定められている。そのため、クラスで旅行に出掛ける場合にも、保護者から集金をすることはできない。子供たちはクラス旅行や卒業パーティーの費用を、教員の関わりなしで自ら稼ぐことが多い。自分たちの目標のために、物を売ったり、イベントを開催したりして「クラス会計」にお金をためていく。
ルウェーのオスロ中央駅の前には、ひときわ目立つ建物群がある。フィヨルドに沿って並ぶオペラハウスと公共図書館、そしてその後ろにあるムンク美術館だ。公共図書館は細長い窓ガラスで覆われており、上階部分が大きく突き出した形のモダンな建物だ。2021年には世界のベスト・パブリックライブラリー賞を受賞している。
スウェーデンでは、公立の基礎学校(日本の小中学校に相当)や特別支援学校に通う子供たちに、無料の学校送迎が提供される。基本的には、学校への距離をもとに路線バスなどの定期券が支給されるが、スクールバスが通らない地域や、通学路に危険な道路がある場合、子供の障害などに応じて、スクールタクシーが配送されることもある。
スウェーデンのウプサラ市にあるクリスタレン子育て支援センターは、移民の親子に遊びや歌の時間を提供したり、スウェーデン語習得を手助けしたりする活動をしている。草の根で社会統合を真に促進していると評価され、2022年度のウプサラ平和賞を受賞した。同支援センターのナディア先生に、活動の様子を見せてもらった。
毎年12月10日はノーベル平和賞の授賞式があるが、スウェーデンのウプサラ市では一足先に「ウプサラ平和賞」の授与式が行われた。これはウプサラの国連協会が、地元で活躍する「日常の英雄」をたたえるもので、毎年10月24日の国連デーに行われる。
北欧諸国では多くの国際養子縁組を受け入れている。ノルウェー的な名前をもち、ノルウェー語を流ちょうに話し、アジア系の外見をしている人がいたら、その人は養子かもしれない。ノルウェーには、韓国、中国、フィリピン、タイなどのアジア諸国、コロンビア、ブラジルなどの南米諸国、エチオピアや南アフリカといったアフリカ諸国などから養子に迎えられた人たちがいる。
スウェーデンの学校給食はビュッフェ形式が多く、子どもたちは食堂に集まって食べる。今年、ウプサラ市では市内の18の学校で、高齢者のための昼食提供を始めた。子どもたちに交じって、近隣の高齢者が安価で給食を食べられる。
ノルウェーの学校では、伝統的に給食が提供されないが、幼稚園(幼保一体化された施設)では食事が提供されることが多かった。子どもが長時間滞在することや、幼児は小学校以上の生徒よりも頻繁に食事をとる必要があることが背景にあるのだろう。しかし、コロナ禍により、幼稚園の食事提供を巡って変化が生じている。
ノルウェーの学校では、日々の清掃は業者が行っている。しかし昨年、オスロ郊外の北フォロ市は経費削減のために新しい清掃スキームを提案し、教員組合の反発を買っている。
ノルウェーでは今年9月に国政選挙があった。政治に対する国民の関心は高く、投票率は77%に達した。そして議員総数169人のうち、今回13人が元「教師」であると報道された。
日本にも北欧にも、夏が来た。休暇を心待ちにしている人がいる一方で、夏期講習で「勝負の夏」を過ごす受験生もいるだろう。スウェーデンには受験はないが、それでも夏期講習にいそしむ若者たちがいる。そしてその数が近年増えている。いったい何が起こっているのだろうか。
国際学力調査などで評価の高いフィンランドは、そのブランド力を生かして「教育の輸出」を進めている。政府は国家戦略を策定し、幼児教育から大学、ノン・フォーマル教育から職能開発まで、120社を超える教育企業の海外進出を後押ししている。
アイスランドは、世界でもっともジェンダー平等が実現している国だ。世界経済フォーラムが発表するジェンダーギャップ指数では、11年連続で第1位に君臨している。父親の8割ほどが育休をとり、国の議員の4割弱が女性だ。この国のある私立園(学校)チェーンは、男女平等のためのユニークな教育方法を実践している。
ノルウェーの建国記念日(5月17日)は晴れやかなお祭だ。街ではパレードが行われ、民族衣装を着た人々が国旗を振る。イベントに華やかさを添えるのが、地元の学校吹奏楽団による演奏だ。ユニフォームを着た子供たちが楽器を吹き、バトンを回して街中を練り歩く。
発端は、ヴァルムドー市にある私立プリスクールがおむつを提供していなかったことに対して、市が3万クローナ(約34万円)の罰金を課したことだ。行政裁判の第一審と第二審ではヴァルムドー市に軍配が上がった。つまり、プリスクールはおむつを提供すべきだと判断したのだ。私立園は「おむつは洋服と同じ扱い」と考え、最高行政裁判所に申し立てた。
日本では来年度から小学校英語が大きく変わる。5、6年生は教科として、3、4年生は外国語活動として始まる。英語教育への関心はさらに高まりそうだ。スウェーデン人は英語が流ちょうなことで知られる。母語はスウェーデン語なので英語は外国語である。また、スウェーデン語以外を母語とする移民も多いため、英語が第二、第三外国語である場合も多い。
広告ブロック機能を検知しました。
このサイトを利用するには、広告ブロック機能(ブラウザの機能拡張等)を無効にしてページを再読み込みしてください