ライター
諸外国の社会現象や制度を日本に紹介するとき、「先進事例」という言葉がよく使われる。そこには「外国の情報は、日本より“進んだ”例でなければ紹介する意味がない」という選別の意識が含まれていないだろうか――。
9月から新学期が始まるフランスでは、7月初旬が学年末。その前の6月中旬から、中学や高校では最終学年の修了資格試験が始まり、学校中が最も緊迫感に満ちる季節だ。それ以外の学年でも、1年を総括する成績表と進級の判定・通知があり、児童生徒のいる家庭はどこも落ち着かない。
ゴールデンウィーク明けの5月8日、東京都内の小学校で、児童の親の共謀による襲撃事件があった。教職員の読者にとって、難しい保護者への対応は頭も胸も痛い切実な問題だろう。中高生の子を持つ筆者もひとごとではなく、思うところが多くあった。
この原稿が公開されるのは、日本ではゴールデンウィークの大型連休の後だろうか。それにかこつけて、今回はフランスの長期休暇「バカンス」について書いていこう。
前回の記事では「学校でのハラスメント(執拗〈しつよう〉な攻撃)」いわゆる「いじめ」が、フランスで違法行為と定められた経緯を、筆者の記憶や所感を添えて紹介した。
フランスの国は「学校でのいじめ」を犯罪とし、加害者を司法で裁いて罰する。教育新聞の読者の方々には、この事実をご存じの方も多いだろう。
この連載の第1回では、フランスの公教育の中でいかに「批判精神」が重要とされているかを見てきた。しかし公教育の体系には、批判精神の学びに特化した教科・科目はなく、「あらゆる学習機会が批判精神を実践する場になり得る」と語る教師もいた。
この新連載はフランスに住む日本人ライターが、日仏の教育の「違い」に着目してつづっていく。本題に入る前にまず、連載の趣旨をお伝えしたい。 筆者は日本に生まれ育って日本で大学まで教育を受けたのち、新卒採用での就職を経験した。25歳でフランスに居を移し25年間が経過したが、そのうち半分以上の年月を、この国の教育現場に何かしら関わって生活してきた。
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