深い学びの実現 子供の実感を大切に(寺崎千秋)

深い学びの実現 子供の実感を大切に(寺崎千秋)
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 「深い学び」とは何かとよく聞かれる。教育課程の基準である学習指導要領に基づけば、子供一人一人に「生きる力」、すなわち「確かな学力、豊かな心、健やかな体」が育成されることであろう。

 特に「資質・能力の三つの柱」「学習の基盤となる資質・能力」「現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力」などを身に付け、さらに一人一人の子供が内に持っている資質・能力を豊かに伸ばすことを重視している。

 深い学びについて中教審は、「知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう」学びとし、「習得・活用・探究という学びの過程で、各教科等の特質に応じた『見方・考え方』を働かせ」ることが大切であると示唆している。

 これらは決して目新しいものではない。文科省の元教育課程課長であった合田哲雄財務課長が「決して浮き足立つ必要はない」と繰り返し述べているように、学校・教師がこれまでも子供の学びが深まるように営々と工夫し努力してきたことだ。

 では、今回、なぜ、改めて「深い学び」を求めるのか。前述の視点から考えてみたい。

 「習得・活用・探究という学びの過程の中で」とは、学習は習得にとどまらないということを示唆している。知識・理解が重要とし、従来の教え込み型授業から抜け出ようとしない教師が少なからずみられる。

 これでは子供の意思決定を軽んじることになり、主体性は育たない。現行教育課程においても、習得した知識・技能を活用する問題解決的な学習の経験を発揮し、自ら課題を設定して探究する学習を重視してきた。

 単元などの学習過程は知識・技能を身に付ける「わかった・できた」という段階、それを活用して自力解決する「自分でできた」という段階、「新たな課題が見えた・見つかった」という新たな課題を発見して探究する段階が組まれている。そのつながりとバランスの実現が重要である。

 「各教科等の特質に応じた『見方・考え方』を働かせ」で重視したいのは、子供たちは学習対象や教材、課題などに自分なりの見方・考え方を有しているということである。

 これまでの教え込み型指導では、教師の見方・考え方で一方的に説明したり教えたりして、子供のそれは無視されてきたといっても過言ではないだろう。教師は子供たち一人一人の見方・考え方を引き出し発揮させるとともに、対話を取り入れることで多様な見方・考え方があることに気付かせるようにする。さらに各教科固有の見方・考え方を示唆し方向付けして問題解決していくことが求められる。教師の手腕・力量が問われるところである。

 教師の指導により子供主体の学び、対話的な学びが充実することによって、「知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう深い学び」が実現する。

 これらの例は、いわば各教科の教科目標、学年目標、単元の目標、本時の目標の集約例といってもよいだろう。すなわち、深い学びはこれらの目標を実現することであり、何か特別な学びがあるわけではない。日々の授業とその積み重ねの結果である。

 教師は日々、毎時間授業をしている。その1時間ごとに目標・目当てや学習課題がある。これを実現し解決していくことが深い学びへの道筋であり、学びを深めていく一歩である。

 このとき大事にしたいのは、学びを深める主体は子供であるという点だ。子供自身、自分の学びが自分の力によって深まっているのを実感することである。これからの評価が学びの意義や価値を実感するのを重視していることとも重なる。

 「深い学び」を子供自らが実感できるようにすることが、教師の重要な役割である。

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