中教審の初等中等教育分科会(分科会長・荒瀬克己教職員支援機構理事長)が7月8日、開かれ、幼児教育の質の向上と、小学校教育との円滑な接続について専門的に議論を行う「幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会」を設置することを決めた。全ての子供が格差なく質の高い学びへ接続できることを目指し、生活・学習基盤を全ての5歳児に保障するための方策や、各地域で幼児教育を着実に推進するための体制整備などについて集中的に議論を進める。特別委員会の設置には各委員が賛意を示し、「何をもって質の高い教育なのか、幅広い議論をしてほしい」などと要望や意見が出された。
今期の初等中等教育分科会の初会合となった8日は、改めて審議事項について確認するとともに、前期の答申で示された「令和の日本型学校教育」の構築に向けた新たな方策の検討に向けて意見が交わされた。
この中で文科省の瀧本寛初等中等教育局長が「幼児教育の質的向上と小学校教育との円滑な接続」についての審議を要請。趣旨説明の中で「多様な子供たちを誰一人取り残すことなく育成し、質の高い学びを実現させるため、最大限の配慮が必要となるのは、地域や家庭環境にかかわらず、全ての子供が格差なく質の高い学びへ接続できるようにすることだ。教育開始年齢の早期化が世界の潮流である中、幼児教育と小学校教育にしっかりと架け橋をかけていく方策について、専門的な見地から議論していただきたい」と述べた。
これを踏まえて、幼児教育と小学校教育との円滑な接続などについて専門的に調査審議を行う「幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会の設置案」が提案された。合わせて主な検討事項として、▽生活・学習基盤を全ての5歳児に保障するための方策▽各地域において幼児教育を着実に推進するための体制整備▽保護者や地域の教育力を引き出すための方策、保育人材の資質能力の向上といった幼児教育の質的向上、小学校教育との円滑な接続を図る上で必要な事項――などが示された。
特別委員会の設置は、各委員から賛成が示されて決定したが、同時に要望や意見が相次いだ。今村久美委員(認定NPO法人カタリバ代表理事)は「委員の選任が非常に重要になると思う。就学前から英語をやるといった詰め込みなどに現状の親は走っている部分もあり、何をもって質の高い教育を早くから提供するかについて、幅広く議論ができる委員を選んでほしい」と要望した。
また、安家周一委員(全日本私立幼稚園幼児教育研究機構理事長)は「幼保小の接続はずっとテーマだったが、質的に違った教育をつなげるという意味で、非常に難しい面があった。幼稚園の先生が学習指導要領を理解していないのと同様、小学校の先生も幼稚園の教育要領への理解が進んでおらず、議論だけが進んで上滑りにならないよう理解を促進した上で進めてほしい」と述べた。
戸ヶ﨑勤委員(埼玉県戸田市教育長)は「行政の課題として、保育内容を指導できる人材や幼稚園教育の研修を担当できる人材が、教委などに極めて少ないということがある。一体的な取り組みには専門職の行政の配置や参画が急務で、教委と関係部署が本気で連携することが不可欠だ」と強調した。
幼児教育と小学校教育の接続を巡っては、文科省は、小中学校における1人1台端末環境や小学校での35人学級を実現することを踏まえ、学習環境に全ての子供が格差なく接続できるようにする「幼児教育スタートプラン」を策定。幼稚園、保育所、認定こども園など施設種にかかわらず、全ての5歳児に生活・学習の基盤を保障する「幼保小の架け橋プログラム」のほか、地域での教育・福祉の連携強化、保育者の確保・資質能力向上などを目指している。