「政治家はもっと教育を考えるべきだ」 末松前文科相が退任会見

「政治家はもっと教育を考えるべきだ」 末松前文科相が退任会見
退任会見で質疑に応じる末松前文科相
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 岸田政権の内閣改造に伴って退任した末松信介前文科相は8月10日、文科相として最後の記者会見を行い、日本の教育関連予算が先進国で最低水準となっていることについて、「政治家はもっと教育に対して考えるべきではないか。(道路のように)形ばかりを求めると、人材が育たない国になってしまう。目に見えない大事なものに、きちんとお金を使うという思想が大事だ」と、人材育成と科学技術の振興にもっと予算を充てるべきだとの考えを示した。その上で、「教育国債。別の財布を作らなければいけない。絶対にこれは教育費として使っていかなければいけない、そういうお金が大事だ」と述べ、教育費に使途を限定した教育国債を財源として発行し、教育予算の充実を図るべきだとの見解を明らかにした。

 末松前文科相は同日午前の臨時閣議で岸田文雄首相に辞表を提出。昨年10月4日に文科相に就任して以来、在任期間は10カ月あまりだった。

 続いて文科省内で開いた退任会見では、在任中の成果の一つとして、教員免許更新制を廃止して教員研修の記録作成を義務付けた法改正を挙げ、「教員免許更新制の廃止だけでいいじゃないかという議員もいたが、最後は分かり合えることができた。教員は自分たちをどういう形で磨いていくか、常に学び続ける姿がやっぱり大事だと認識した」と振り返った。

 教員研修の記録作成については、「私が特にこだわったのは、研修のレポートを出すことにものすごく時間が割かれ、教員の負担が大きいということ。(国会での質疑では)こういう習慣や提出物は簡素化していくべきだと答えた。私が文科省を去っても、しっかり見続け、検証していきたい」と強調した。

 日本の財政における教育費の支出が先進国で最低水準となっていることについて見解を問われると、末松前文科相は「教育問題は政治家が話題として訴える割合が少ないと思っている。政治家は自分の地域にとっての道路とか、営農活動とか、商店街を訴えるが、教育にはそういう形はない。形はないけれども、子供たちの頭と心の中に植え付けられていき、それが富を生む社会を作っていく。政治家はもっと教育に対して考えるべきではないか」と述べ、政治家が地元の利益に比べて教育にあまり関心を持たないことに一因があるとの見方を示した。

 さらに「日本はエネルギーの自給率が12.1%、鉱物資源ではリチウムやコバルト、ニッケルは0%。食料自給率はカロリーベースで、やっと37%。原材料は全て外国から持ってきて、それを加工して輸出し、外貨を獲得し、それでエネルギーを買っている。それを支えているのは、間違いなく人材力と科学技術力。そういう考え方に立てば、教育にお金を使わなければ成り立たないという認識になる」と、日本の国際競争力を高めていくためにも教育予算を増やす必要があるとの見方を強調した。

 その上で、「ここはやはり教育国債」と指摘。今年5月19日、教育を使途に限定した教育国債の活用などで「教育投資の抜本的拡充」を求めた自民党の教育・人材力強化調査会(会長=柴山昌彦元文科相)の提言に触れながら、「国債と言ったら赤字国債と一緒じゃないか、という財務省の言い分もあると思う。しかし、別の財布を作らなければいけない。絶対にこれは教育費として使っていかなければいけない、そういうお金が大事だ。財務省の職員だって自分たちが教育を受けてなっているのだから、そのことを考えければいけない」と、教育予算を増やすために、教育国債を財源として発行すべきだとの考えを表明した。

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