児童養護施設や里親家庭で育った子ども・若者の支援に取り組む「ACHAプロジェクト」が11月24日に公表した、子どもの頃に虐待を受けたことがある人に行ったアンケート結果で、虐待を受けていることについて学校の教員に相談できたのは4人に1人程度だったことが分かった。相談しなかった人のうち、教員が虐待に気付いたと答えたのは、2割を下回った。
アンケートは昨年6月5日~7月7日に、インターネットで実施。SNSを活用して子どもの頃に虐待を受けた経験のある人を対象に協力を呼び掛け、1005件の回答を得た。回答者は10~30代が全体の8割を占め、男性が121人なのに対し、女性は823人、性別に関して無回答・その他は61人と、女性の割合が高くなっている。
誰から虐待を受けていたかを複数回答で尋ねると、母親が66.3%で最も多く、次いで父親が56.5%。その他の回答には、教員などの学校関係者や塾や習い事の先生なども含まれていた。
学校の教員に相談することができたと回答した割合は、男性が23.1%、女性が24.8%で、いずれも7割以上の人が相談していなかった。相談した時期では男女ともに中学校が、相談相手は担任が最も多かった。
また、相談しなかった人のうち、教員が虐待に気付いたという人の割合は、男性で16.5%、女性で18.3%だった。
教員からの対応でうれしかったことを自由記述で尋ねたところ、「誰のことも否定せずに話を聞いてくれたこと。解決策をきちんと提示してくれたこと。考えを押し付けることなく決断を自分に委ねてくれたこと」「できるだけ長く学校に残れるようにしてくれたり、毎日夜中にたたき起こされて酔っ払った親に殴られたり説教されたりで寝られていなかったため、保健室で寝られるように手配してくれたりした」など、自分の話を聞いてもらえたことや安全な場所を用意してくれたことを挙げる声があった。
一方で、教員からの対応で嫌だったことについては「『親も一人で子育てして大変だから支えてあげようという優しさを持ってね』と言われた」「すぐ親に報告したり、信用しなかったりしたこと。『あんなにいい親がありえない。思い違い。わがままなところを直したら。もっとつらい人たちがいる』と言われたこと」「『話したことが(相手に伝わると)余計にされるから言わないで』って言ったのに、親に連絡した。他の人に聞かれるような職員室や廊下などの場所(で)『親とはどうか? もうされてないか?』など聞かれた」と、虐待をしている親に子ども本人の意向を踏まえずに連絡を取ろうとしたり、虐待を受けていることを周囲に知られないようにするための配慮が欠けたりしていることなどがみられた。
「ACHAプロジェクト」の山本昌子代表は「今回のアンケートを通じて、虐待の対応としてまず大切なのは、SOSとしての子どもの声をしっかり聞くことだと感じた。これまでの経験などにとらわれず、目の前の子どもの声を信じることも求められている。例えば、『問題行動を繰り返す子ども』がいたときに、その子どもの行動こそがSOSだということを知っておいてほしい。マニュアル通りではなく、一人一人に合わせた対応が必要だ。このアンケートをきっかけに、5年後や10年後の学校における虐待対応の在り方を、少しでも良い方向に変えることになれば」と話している。