岸田文雄首相は1月20日、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けを、今年の春に季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げる方向で検討を進めるよう、担当閣僚に指示した。患者や濃厚接触者の外出自粛、マスク着用などの感染対策についても見直していく考えを明らかにした。こうした「5類」への引き下げに伴う学校現場の新型コロナ対策の見直しについて、永岡桂子文科相は同日の閣議後会見で、「感染拡大の防止と学校教育活動の継続、この両立を図ることで、子供たちが安全安心な環境の中で充実した学校生活を送ることができるように、専門家の意見なども聞きながら、しっかりと検討してまいりたい」と述べた。
岸田首相は同日、加藤勝信厚労相や後藤茂之新型コロナ担当相と首相官邸で協議。終了後、記者団に対し、「原則として春に『5類』とする方向で専門家に議論してもらいたい、と確認した」と述べた。
感染症法上の位置付けが「5類」に引き下げられると、政府は緊急事態宣言を発令することができなくなり、感染者や濃厚接触者への待機要請、就業制限、入院勧告などの行動制限もなくなる。現在、発熱外来や指定の医療機関に限られている新型コロナの診療は、一般の医療機関でも可能になる。
岸田首相は「感染症法上の位置付けの変更に伴い、患者や濃厚接触者の外出自粛について見直すこととなる。平時の日本を取り戻していくために、これまでのさまざまな政策措置の対応について段階的に移行することとし、具体的な検討調整を進めていく。また、一般的なマスク着用の考え方などの感染対策の在り方についても見直していくこととなる」と説明した。この首相指示を受け、今後は厚労省が専門家による検討会を開き、「5類」への引き下げに向けた具体的な議論を進める見通し。
「5類」への引き下げの検討が学校現場に与える影響について、永岡文科相は同日の閣議後会見で、「学校における新型コロナ対策については、感染拡大の防止と学校教育活動の継続、この両立を図ることで子供たちが安全安心な環境の中で充実した学校生活を送ることができるように、専門家の意見なども聞きながら、しっかりと検討してまいりたい」と説明した。
さらに、マスクの着用が児童生徒にさまざまな影響を与えていることについて見解を問われ、「厚労省を中心に見直しに向けた議論が行われ、その中でマスクの着用といった基本的な感染症対策の在り方についても検討されると認識している」とした上で、「新型コロナウイルス感染症が拡大し始めてから、3年になる。やっと今、政府で感染症法上の分類を引き下げようという動きがある。私の中では、学校の子供たちは本当にマスク漬けで大変だなと思っているが、政府が決める基本的な感染症対策の在り方をしっかりと守りつつ、対応させていただきたいと考えている」と答えた。
学校現場での新型コロナ対策について、文科省では衛生管理マニュアルを何度も改訂しながら、感染症対策の指針としてきた。感染症法上の位置付けが「5類」に引き下げられた場合、この衛生管理マニュアルの扱いが一つの焦点になる。
文科省では「衛生管理マニュアルには、これまでの新型コロナ対策を通じて獲得してきたさまざまな知見が詰まっている。例えば、教室の換気が『5類』になると、有効ではなくなるかと言えば、そんなことはない。ただ、新型コロナの感染症法上の位置付けが変われば、衛生管理マニュアルには、指針としての効力がなくなるかもしれない。それとも学校現場に知見として参照してもらう形で残すのか、政府全体の議論を見ながら検討したい」(初等中等教育局健康教育・食育課)と話している。
気になる学校でのマスクの取り扱いについては「基本的な感染症対策の在り方として、仮に、マスクの着用は屋内でも不要となったとき、学校だけ特別に『マスク着用を続けましょう』というのは、おかしい。そこは政府全体の方針に従うことになる。ただ、ある地域や学校で新型コロナがはやっているときに、学校が『マスクを着けましょう』と指導することは当然。そういう意味では、コロナ禍が起きる前のように、学校の裁量に委ねることになるだろう」(同)と説明した。