文科省はこのほど、児童生徒の痴漢被害への対応を求める事務連絡を、各教育委員会などに向けて発出した。内閣府、警察庁、法務省、文科省、国交省の5府省庁が「痴漢撲滅に向けた政策パッケージ」を取りまとめたことを受けたもので、文科省によれば、痴漢被害を受けた児童生徒への対応を整理したのは初めて。被害に遭った児童生徒が学校を欠席・遅刻した場合、指導要録上、欠席や遅刻として扱わないことや、入試では試験時間の繰り下げや別日程への振り替えの対象とすることなど、被害を受けた児童生徒への配慮を求めた。
5府省庁は先月末、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022」で定められた方針に基づき、政策パッケージを取りまとめた。基本認識として▽痴漢は重大な犯罪である▽痴漢の被害は軽くない▽被害者は一切悪くない▽被害者を一人にしてはいけない▽痴漢は他人事ではない――を挙げ、学校における相談体制の充実、痴漢被害を理由とした遅刻や欠席の対応、被害に遭った受験生の受験機会の確保といった、被害者を支える取り組みなどを今後の施策として盛り込んでいる。
また、通学中に被害に遭った場合、学校を遅刻・欠席扱いとされることによる不利益を避けるため、警察への被害の届け出や相談を諦めるケースが多いことや、大学・高校入試などで試験会場に向かう途中、試験に遅刻できないが故に通報が困難である受験生の心理に付け込み、SNSで痴漢をあおる投稿が見られているとも指摘している。
こうした状況を踏まえ、文科省の事務連絡では、痴漢被害に遭った児童生徒に対して、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、SNSなどによる相談を積極的に活用することとした。また、通学中に痴漢被害に遭った児童生徒が警察への被害の届け出や通報を行ったことにより、学校を欠席した場合、校長が認める場合は指導要録上、欠席日数として扱わないよう求めたほか、遅刻についても柔軟な対応を求めた。
また、大学・高校入試などで試験場に向かう途中に痴漢被害に遭った場合には、それにより受験機会を失うことがないよう、試験時間の繰り下げや別日程への振り替えの対象とするなど、柔軟な対応に努めることを要望した。加えて、各都道府県に設置されている性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターと連携して支援に当たることを求めた。
さらに、学校における教育として、通学路での安全確保と安全教育を推進することや、子供たちを性犯罪・性暴力の加害者、被害者、傍観者にさせないための「生命(いのち)の安全教育」を通じて、被害に遭った際や目撃した際の行動、緊急時の110番通報などを周知することなどを求めた。
各都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号は「#8103(ハートさん)」、ワンストップ支援センター全国共通短縮ダイヤルは「#8891」(はやくワンストップ)。性暴力に関するSNS相談「Cure Time(キュアタイム)」も運用されている。