いじめ防止法成立から10年 文科相「学校の積極的な認知を評価」

いじめ防止法成立から10年 文科相「学校の積極的な認知を評価」
いじめ防止対策の評価と課題について語る永岡文科相
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 2013年6月21日に「いじめ防止対策推進法」が成立してから、10年を迎えることを踏まえ、永岡桂子文科相は6月20日の閣議後会見で、いじめの認知件数などが増加していることや、いじめの解消率が8割を超えていることなどを基に、これまでの学校のいじめ防止対策を「肯定的に評価している」と語った。また学校現場の多忙化により、いじめの早期発見・早期対応が難しくなっている実態については「教師だけではなく、さまざまな関係者との協力・連携を行っている」として、スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)の配置、相談窓口の充実に取り組むと説明した。

 文科省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(21年度)によれば、13年度に小中学校・高校・特別支援学校を合わせて18万5803件だったいじめの認知件数は、21年度に61万5351件にまで増加した。これについて永岡文科相は「文科省としては、学校がいじめを積極的に認知して、そして解消に向けて取り組みに着手しているものとして、肯定的に評価をしている」と述べた。

 また認知したいじめのうち、①いじめにかかる行為が止んでいる②被害児童生徒が心身の苦痛を感じていない――の要件を満たし、「解消した」とされたものの割合は、21年に全学校種合わせて80.1%となっており、これについても永岡文科相は「いじめの認知件数が増加しているにもかかわらず、いじめの解消率が21年度においては8割を超えている点についても、肯定的に評価をしている」と語った。

 一方、いじめにより「生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがある」、または「相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある」とされるいじめの重大事態については、21年に705件と増加傾向にあり、こうした状況について永岡文科相は「中には被害を受けた児童生徒がいじめを苦に自殺するという、最悪のケースに至っている事案も発生するなど、いじめの積極的な認知や組織的な早期発見・早期対応を、より一層徹底していく必要がある」と指摘した。

 こうした状況を踏まえ、文科省では今年2月、「犯罪に相当するいじめ事案について、直ちに警察に相談、通報を行い、適切な援助を求めなければならない」とする通知を出したほか、今年度からいじめの重大事態について報告を求め、調査報告書を収集・分析した上で、国における政策立案に活用するといった取り組みを進めるなど、「いじめ防止対策の改善、そして強化に取り組んでいる」とした。さらに「こども家庭庁をはじめとした関係省庁とともに、各学校においていじめの積極的認知や、組織的対応が図られるよう、必要な支援に取り組んでいきたい」と意気込みを語った。

 だが多忙化する学校現場では、子供とじっくり向き合う時間を確保できず、いじめの早期発見が難しくなっていることもある。こうした状況について永岡文科相は「いじめの早期発見・早期対応のため、教師だけではなく、さまざまな関係者との協力・連携を行っている」と述べ、「今年度予算では、SCやSSWの配置の充実と、『24時間子供SOSダイヤル』やSNSを活用した相談体制の整備推進などを盛り込み、教育相談体制の強化に取り組んでいる」と説明した。

 さらに「1人1台端末を活用して、悩みや不安を抱える児童生徒がSOSを発信したり、チャットで学校の先生と気軽に相談したりできるようにするなどの取り組み事例も積極的に全国に周知している」と述べ、「いじめの未然防止、早期発見・早期対応などにかかる取り組みの、より一層の充実に向けて取り組んでまいりたい」と強調した。

 いじめ防止対策推進法は、11年に大津市で起きた中学生のいじめ自殺事件をきっかけに成立したもので、いじめの定義のほか、国・自治体・学校が組織的にいじめ防止対策にあたること、児童生徒に重大な被害が生じた疑いがある場合は重大事態として対応することなどを定めている。

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