前回に続いて「エピジェネティクス」に着目します。今回は連載のテーマである不登校等の長期欠席支援という文脈に話を戻して、社会的要因が生物学的要因に影響を与え、それが心理学的要因にも影響を与えている可能性について考えます。
「バイオ・サイコ・ソーシャル」を合言葉とするこの連載も、いよいよ中盤に入ってきました。このタイミングで、これまで見えにくかった生物学的要因と社会的要因のつながりを考えるためのキーワードとして、「エピジェネティクス」を取り上げます。やや複雑な概念ですが、とても大切な考え方ですので第7回まで3回に分けて説明します。
BPSモデルを活用する利点は、生物学的要因、心理学的要因、社会的要因の3つをトータルに見て、児童生徒理解の幅を広げることにあります。今回は「聴覚情報処理障害(APD)」を取り上げます。「聴覚情報処理障害」は「聴覚障害」と異なり、音それ自体は聞こえているものの、そこから必要な情報を取り出すなどの処理がしづらい状態を指します。
前回は、情報不足による「基本的帰属のエラー」を乗り越えるために、BPSモデルを活用して想像力を高める必要があることについて述べました。特に「無気力」などの心理学的要因に目を奪われて、生物学的要因や社会的要因が見えていないケースは意外に多いように思われます。
この連載の合言葉は「バイオ・サイコ・ソーシャル(BPS)」です。BPSモデルは、文字通り、生物学的、心理学的、社会的という3つの要因を必ずセットで考えましょうという理論です。ポイントは、これら3つの要因が相互に関連していると捉えることです。
2023年度、不登校の小中学生は34万人(長期欠席全体では49万人)を超え、11年連続での増加となりました。12年度と比較して中学3年生で2.2倍、小学1年生では9.7倍と言われるとインパクトがあります。教職大学院に勤務する筆者に「なぜ不登校・長期欠席が増えているのか」と尋ねる人も増えているように感じます。
広告ブロック機能を検知しました。
このサイトを利用するには、広告ブロック機能(ブラウザの機能拡張等)を無効にしてページを再読み込みしてください