私は塾講師時代、生徒を高いレベルの学校に合格させようと躍起になっていました。生徒が行きたいと思う学校を土台にしてはいましたが、望むか望まざるかより先に、私の価値観を押し付けていたのです。そもそも成功の定義なんて人によって異なるのに、当時はそれだけが成功への「最短距離」だと信じていました。
今回は、子どもが何らかの問題に見舞われて一人で自己決定をするのが難しい場面で、どんな支援ができるか考えてみます。家庭でトラブルが起きた、友人関係がこじれた、模試でとんでもない成績を取ってしまった等々、長い時間を学校で過ごしていればさまざまなことが起こります。
子どもの自己決定を支援するようにしていても、中には「やらされ感」を抱いている子どももいます。自己決定こそしているものの、その動機が外発的である子どもに何ができるでしょうか。下の図は、心理学者のデシとライアンが自己決定性(自律性)を整理したものです。動機付けは連続的であり、それぞれのレベルに応じて自己決定性を高めるアプローチは異なります。
「やりたいこと」「なりたいもの」「自分らしさ」という言葉は、あたかも「なければならないもの」として語られがちです。子どもに「それがない自分は駄目なやつだ…」と思わせないような配慮が必要です。人生100年時代に突入し、「教育-仕事-引退」の3ステージから、マルチステージ制に移行しています。もはや、一発で正解をつかまなければならない時代ではありません。
前回までの記事を読んで「多忙を極める学校現場で、一人一人と丁寧に話をする時間なんてない!」とお考えになる方もいるかもしれません。私も空き時間を見つけては生徒と話をしていますが、授業準備や部活動などもあり、「生徒との時間をもっと取りたい」というのが本音です。
子どもの自己決定を支援するために、「問い」はどのように活用できるでしょうか?…と問いを投げたことで、読者の皆さんにも「問い」が生まれたかもしれません。「問い」は、思考の機会を創り出す営みです。今回は、自己決定の壁になる「どうせ無理」と考えがちな子どもを例に考えてみます。
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