健やかな眠りに一役 理研と東大が合同で子どもの睡眠健診

健やかな眠りに一役 理研と東大が合同で子どもの睡眠健診
実態調査に使用する腕時計型のウェアラブル端末(写真提供:理化学研究所)
【協賛企画】
広 告

 理化学研究所(理研)と東京大学の共同プロジェクトチームは9月12日、子どもや保護者に対して、睡眠衛生に関する理解増進を推進する「子ども睡眠健診」プロジェクトを始めた。全国の小中高生を対象に2025年度まで、ひと月当たり最大1000人の睡眠測定を実施。現在、参加者を募集している。睡眠実態の把握と解析や測定結果のフィードバックを通して、子どもの睡眠に対する意識の向上につなげる狙い。プロジェクトチームは「子どもの睡眠問題の把握と解決は、未来を担う若者たちの健やかな成長と発達に寄与し、大きな社会的インパクトと価値を持つ」としている。

 プロジェクトは理化学研究所生命機能科学研究センターの上田泰己チームリーダーと、東京大学大学院医学系研究科の岸哲史特任講師らが共同で行う。

 実施の背景について、プロジェクトチームは「成長期の子どもにとって睡眠は、学力や体力、心身の健康の保持増進などに重要であることが示されており、社会的関心も高まっている」とした上で、「成人の睡眠の実態把握に関する取り組みは進んできたが、成長期の子どもに関する研究は多くない」と説明。加えて、「子どもの睡眠を客観的に測定し、結果を還元する仕組みを構築することは、『睡眠測定を通じた健康管理を当たり前にする』社会の基盤になる」とした。

 プロジェクトの目標として、▽子どもの定量的な睡眠測定に対するハードルを下げ、日本の子どもの睡眠の実態把握を容易にする▽学校での健康教育の一環として、睡眠改善のための取り組みを効果的に実施できるようにする▽参加者には自分の睡眠パターン、生活パターンを把握し、自身の生活習慣改善に対する意識向上につなげてもらう――ことを挙げた。

 その軸として、全国の小中高生を主な対象に25年度まで睡眠に関する実態調査を実施する。ひと月当たり最大1000人を見込んでおり、対象者は腕時計型のウェアラブル端末を1週間装着したまま生活し、起床や就寝時間などの睡眠日誌を記入。端末と日誌を返却した後、休息期や中途覚醒率などが確認できる測定結果の解析レポートを受け取る。一連の取り組みを通し、保護者や子どもに睡眠衛生に対する理解を高めてもらい、睡眠リテラシーの向上を目指す。また、客観的な測定に基づいた「健康な睡眠」の定義に迫る研究を推進するとしている。

 睡眠状態の解析には上田氏と東京大学、ソニーモバイルコミュニケーションズによる研究チームが独自に開発したアルゴリズム「ACCEL」を使用。腕が動く速度の変化から、睡眠・覚醒状態を判定するもので、プロジェクトチームによると、従来の方法に比べて、夜中に目が覚める「中途睡眠」を検出する能力に優れているという。

 プロジェクトの詳細確認や参加申し込みは専用ホームページから行える。

 プロジェクトに関連して、キックオフシンポジウムを10月22日にオンラインで開く。児童生徒の睡眠に関する講演と同プロジェクトに関して研究者が説明を行う。参加希望者は専用フォームから事前申し込みが必要。

広 告
広 告