子どもの体力、低下続くもコロナの影響は限定的 運動能力調査

子どもの体力、低下続くもコロナの影響は限定的 運動能力調査
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 スポーツ庁は10月12日、2021年度の「体力・運動能力調査」の結果を公表した。男子の体力テストは小中高全ての年代で、コロナ禍前の19年度の数値を下回った。分析に当たった専門家は新型コロナウイルスの影響について、上体起こしや20メートルシャトルランなど一部種目で影響が考えられるとする一方、「ほんのわずかな変化をもって上がった、下がったと一喜一憂するのではなく、もう少し長い目で見て、どうなったのか判断するべき」と述べ、影響は限定的とした。

 同調査は国民の体力・運動能力の現状を明らかにするとともに、体育・スポーツの指導と行政上の基礎資料を得るために1964年から毎年実施。20年度はコロナ禍の影響で調査人数が19年度の15%にとどまったことから、参考値として公表していた。

 小中高の結果については、小学生の低学年(7歳)、中学年(9歳)、高学年(11歳)、中学生(13歳)、高校生(16歳)をそれぞれ男女に分類し公表した。それによると、体力テストの合計点の平均値は男子が7歳で37.97点(19年度38.10点)、9歳で49.79点(同49.83点)、11歳で60.78点(同61.29点)、13歳で44.66点(同45.07点)、16歳54.07点(同55.46点)。女子は7歳で38.41点(同38.22点)、9歳で51.11点(同51.28点)、11歳で61.59点(同62.72点)、13歳で51.76点(同53.45点)、16歳で53.88点(同53.27点)で、7歳と16歳女子を除き、2年前を下回った=表①

 分析にあたった順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科の内藤久士教授は新型コロナウイルスの影響について、「単純な解釈はできない。ウィズコロナが浸透してスポーツや運動、子どもたちの教育の現場で新しい生活様式が定着したときになって、初めて振り返って判断しようと思う」と述べるにとどめた。

 一方で、7歳女子を除き、全ての年代で19年度を下回った20メートルシャトルランについては、「部活動など普段からよく体を動かすことが、すぐに体力テストの結果として表れやすいものにおいては少し影響が出たかもしれない」(内藤教授)とし、新型コロナの影響を一定程度認めた。また9歳女子を除き、全ての年代で19年度を下回った上体起こしの低下についても、「押さえている人がいると、起き上がった時に顔が面と向かって、息がかかってしまうことを避けて、なるべくやらなかったのかなと思う」と私見を述べた。

 

 また、ハンドボール投げやソフトボール投げといった投的種目に関しては、第1期スポーツ基本計画が策定された12年度と比較し、全ての年代で低下。11歳男子のソフトボール投げに関しては25.43メートルと、12年度の29.58メートルと比較し1割以上低下した=表②

 この結果について、内藤教授は「ボールを投げるのは複雑な運動なので、経験が一番大きい。小さな学年あるいは就学前からキャッチボールなど投げる経験が少なくなっていると想定される」と指摘。また、順天堂大学の鈴木宏哉先任准教授も「走る、跳ぶ、投げるは基本的な運動動作。ボール投げの結果は基本的な運動動作の能力の低下を代表するもの」とした。

 スポーツ庁が3月に策定した第3期スポーツ基本計画では、今後5年間に総合的かつ計画的に取り組む12の施策の一つに「スポーツによる健康増進」を挙げており、その中身として、「健康増進に資するスポーツに関する研究の充実・調査研究成果の利用促進」と記している。スポーツ庁健康スポーツ課の和田訓課長は、東京オリンピック・パラリンピックによるスポーツの機運向上を契機に、誰もがスポーツに参画できるような機会の創出・意識の醸成に取り組むとした上で、「コロナの影響についても知見が得られれば、知見に基づいて行政の施策も考えていかなければいけない」と述べた。

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