自民党は10月18日、政府が今月取りまとめる予定の総合経済対策に向け、各分野の重点事項を集めた提言を岸田文雄首相に申し入れた。提言は▽物価高騰の克服▽円安への対応▽構造的な賃上げと成長のための投資・改革の実現▽国民の安全・安心の確保――の4つを柱としている。コロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻を背景とする物価高騰といった国民生活への対応とともに、岸田首相が掲げる「人への投資」に伴う教育施策、子供・子育て世代への支援の推進なども盛り込まれた。
提言では、「難局の克服に向けて」の中で、低年齢児(0~2歳)の親への支援を強化し、妊娠初期から安心して出産・子育てができるよう伴走型支援、経済的支援の充実・拡充を図るなど、子供・子育て世代への支援にきめ細かく、手厚く取り組むべきとした。また、静岡県牧之原市で起きた園児の送迎バス置き去り死亡事件などを受け、子供の安全対策にも力を尽くす必要があるとした。
教育関係の重点事項としては、高度専門人材の抜本的な拡充に向け、意欲のある大学・高専が学部の再編などによる成長分野への転換や、トップレベルのデジタル人材育成に向けた機能強化に取り組むことができるよう、施設設備の初期投資や新たな教員の雇用のための人件費について、継続的に支援するための基金を創設することを提案。
1人1台端末を用いた効果的な実践例の創出・横展開、GIGA スクール運営支援センターの機能強化やデジタル教科書・教材の活用のための通信環境調査、校務のデジタル化による学校の働き方改革の推進、デジタル技術を活用した教員研修の高度化など教育DXの推進を盛り込んだ。
また、大学や学問領域を超えた連携により特定分野において世界トップレベルの研究を推進する機能や、産学官・地域連携による社会実装を担う機能など、地域大学の強みや特色を伸ばしながら、それらを核とした戦略的経営を後押しするため新たな基金を創設することなども提言した。
一方、文化芸術分野ではインバウンド需要回復や地域活性化を図るため、統括団体を核とした地域における公演の開催、子供たちの鑑賞体験機会の確保、地域の伝統行事や伝統芸能、食文化、生活文化の振興に必要な支援を行うこと、スポーツ分野では環境整備の支援に加え、国内で開催される国際競技大会の円滑な実施を支援することを指摘。少子化の中でも子供たちがスポーツ・文化活動に継続して親しむ機会を確保できるよう、休日の部活動の地域連携や地域スポーツ文化クラブ活動移行に向けた取り組みを推進することも求めた。
また今秋以降、新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの同時流行も想定し、子供たちの学びを保障するため、学校における感染症対策の徹底を図りながら教育活動を継続できるよう支援すること、子供の安全対策を徹底するため、送迎バスを保有する幼稚園、認定こども園、特別支援学校で、安全管理マニュアルの作成や職員への研修、登園管理システムの普及を行うとともに、送迎バスの安全装置の整備などを支援することにも言及した。
子供・子育て世代への支援については、今年上半期の出生数が前年比5%減の約 38万5000件となり、少子化傾向に拍車を掛けることが懸念されることから、結婚支援や妊娠期から出産期にかけての切れ目ない支援強化として、経済的支援や相談支援に前倒しで取り組む必要があるとしている。