いくつかの自治体で学校給食時の制限緩和が進む中、永岡桂子文科相は11月8日の閣議後会見で、食事中に会話をしない、いわゆる「黙食」について、「必ず求めているわけではない」と強調。その上で、文科省の衛生管理マニュアルを参考に、地域の実情に合った感染対策を実施するよう改めて求めた。
給食について、文科省が策定している衛生管理マニュアルでは、「児童生徒の健やかな育ちを支える重要な機能である一方、感染のリスクが高い活動」と指摘。児童生徒など全員が食事の前後に手洗いを徹底することに加え、「飛沫を飛ばさないよう、例えば、机を向かい合わせにしない、 大声での会話を控えるなどの対応が必要」といった感染対策が記してある。
一方で、昼食のときに会話をしない、いわゆる「黙食」の指示はしていない。文科省初等中等教育局健康教育・食育課は「文科省として黙食を求めたことは一度もない」と強調し、「黙食を否定することはないが、縛られる必要はない。手洗い・換気などの基本的な感染対策を行う前提で、地域によっていろいろなやり方があっていい」と述べた。
給食時の制限緩和に関しては、愛知県で10月28日にガイドラインを改訂。「食事中は会話を控えるように指導する」という記述を「食事中は大声での会話を控えるよう指導する」に変更したほか、座席についても「全員正面を向かせるなど」の記載を削除し、「向かい合わせにならないように配置する」のみに改めた。福岡市や宮崎県でも同様の動きが進んでいる。
このほか、千葉県の熊谷俊人知事は10月28日に文科省を訪れ、簗和生文科副大臣に要望書を提出。衛生管理マニュアルについて、一般社会で対策が見直される中で過剰だとして、「机を向かい合わせにしない」の記載の削除などを求めた。
同県では4月、黙食であれば給食も対面で可能とする通知を学校現場に発出している。また現在、県立高校3校をモデル校に、黙食の是非も含めた行動制限の見直しに取り組んでおり、年内をめどに、他の県立高校などに情報提供する予定としている。同県教育庁保健体育課は「県の通知だけでは緩和に踏み出せない学校もある。黙食はしなくてもよいと文科省から通知をしてくれた方が、学校現場も動きやすいと思う」と話す。
これらの動きについて、永岡文科相は11月8日の閣議後会見で、「子供たちの心身の健やかな成長の観点から、向かい合った席の配列や、大声での会話を控えた上で、給食の場面において、子供同士で会話をすることを認めている教育委員会もあると承知をしている」と理解を示した。その上で、学校教育活動を継続していくために、衛生管理マニュアルを参考としながら、地域の実情に応じた感染対策を引き続き行うように改めて求めた。