全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)は11月30日、今年9月末までの私立中学・高校における学費の滞納、中退調査の結果を公表した。私立高で3カ月以上、学費を滞納した生徒の割合は3年連続で0.5%台と抑えられたが、わずかに前年より上昇し、中退生徒の割合も2年連続の減少から増加に転じた。山口直之中央執行委員長は「高等学校等就学支援金制度の拡充で学費滞納、経済的理由による中退を大幅に増加させることは食い止めたが、コロナ禍の影響に苦しむ生徒もまだいるので、さらに支援を国に求めたい」と話している。
同調査は、全国私教連に加盟する私立学校を対象に実施し、34都道府県の私立高363校(在籍生徒数30万1875人)、26都道府県の私立中184校(同7万2001人)から回答を得た。
調査結果によると、今年9月末時点で、私立高で3カ月以上の学費滞納生徒は1619人おり、全調査生徒数の0.54%を占め、前年(1432人・0.50%)よりわずかに増加した。割合が前年より増加したのは17年以来。3カ月以上の滞納が10人以上は34校で、うち30人以上は2校、50人以上は2校。最も多かった学校は64人だった。3カ月以上の学費滞納生徒がいないと回答したのは138校、全体の38.02%で、前年(97校・27.95%)より増えた。
6カ月以上、学費を滞納した生徒も603人、全体の0.20%で前年(409人・0.14%)より増加。コロナ禍の影響による経済的打撃が原因とみられる滞納については50人、全体の0.016%で、前年(87人・0.03%)より減少した。
私立中では、3カ月以上の学費滞納生徒は119人、全体の0.17%で、前年(85人・0.12%)より上昇した。
一方、4月から9月末までに経済的な理由で私立高を中退した生徒は、前年(10人・0.0035%)まで2年連続で数・割合ともに減少していたが、今回16人で全体の0.005%となり増加している。
20年度から拡充された国の高等学校等就学支援金制度では、年収590万円未満の世帯に年間39万6000円支給されているが、これらは18年の私立高授業料平均額に基づいて算出されており、全国私教連の調査では現在同平均額は約44万円に達していることから、多くの地域では支給額を上回るケースもでている。さらに入学金や施設整備費なども負担増の傾向にある。
これらの結果を受け、山口中央執行委員長は国に対して今後、「就学支援金制度を年収910万円未満世帯まで授業料無償とすることや、給付額を前年の平均授業料を基に毎年増額変更すること、入学金補助制度を創設することなどを求めていきたい」と話している。