静岡県裾野市の私立さくら保育園で、保育士らが園児に対して足をつかんで宙づりにしたり、カッターナイフを見せて脅したりなど不適切な行為を繰り返していたとされる問題で、小倉将信こども政策担当相は12月2日、閣議後会見で、「子供の安全安心が最も配慮されるべき保育所において、このような事案はあってはならず誠に遺憾。日々、一生懸命真面目に働いている全国の保育士にとっても大変失礼な話だ」と述べ、今後の県や市の対応を注視する姿勢を示した。永岡桂子文科相も同日の閣議後会見で、「子供もそうだが保護者、園に関係する全ての人が本当にあってはならないことと考えているだろう」と述べ、今回の保育士らの行動を批判した。
市のこれまでのまとめでは、同園で1歳児クラスを担当している 6 人の保育士のうち3 人が、不適切な保育を行っていた。園が確認し市に報告した不適切な保育は15項目。その内容は、①ロッカーに入って泣いている園児の姿を携帯電話(個人所有)で撮影②園児の頭をバインダーでたたき泣かせる③棚に入った園児の足をつかんで引っ張り出し、足をつかみ宙づりにする④遅刻の連絡のあった園児に対し、腕を引っ張り「遅いんだよ」と怒鳴る⑤午睡時、寝かせつけた園児に対し、「ご臨終です」と何度も発言⑥泣かない園児に対し、額をたたき無理やり泣かせようとする⑦昼食時に園児を怒鳴りつけ、頬をつねる⑧日常的に特定の園児に対しにらみ付け、声を荒げ、ズボンを無理やりおろす⑨園児を宙づりにした後、真っ暗な排せつ室に放置⑩園児の容姿をばかにした呼び掛け(ブス、デブなど)、暴言を浴びせる⑪手足口病の症状のある園児のお尻を、無理やり他の園児に触らせる⑫給食を食べない園児に対し、突然、後ろから頭をたたく⑬不適切な発言をして、玩具が入っている倉庫に閉じ込める⑭園児に対し、カッターナイフを見せ脅す⑮丸めたゴザで園児の頭をたたく――だった。
市では、市民からの通報を受け8月17日に把握し、同月22日に園長と面談し事実関係を調べるよう指導。園による保育士へのヒアリングなどによって、不適切な保育の内容が明らかになった。
村田悠市長は11月30日の臨時記者会見で、「保育園を指導する立場の行政として、問題点を真摯(しんし)に受け止め、改善に取り組むとともに、公私立園問わず、風通しの良い幼児施設運営に向け、関係機関と連携し監査監視体制を確立し、このような事件を2度と起こさぬよう努めていく」と陳謝した。
小倉担当相は会見で、「今後、静岡県と裾野市において特別指導監査をすると聞いているので、事実関係を踏まえて園、保育士に対して厳正に対応するものと考えている」とした。その上で、「被害を受けた子供やその家族をはじめ、関係する方々の心のケアにも当たっていると聞いている。こうした事案はあってはならず、所管する厚労省と連携して、県や市の対応などを注視しながら適正な保育所の運営の確保を図っていきたい」と話した。