静岡県裾野市の私立保育園で女性保育士3人(退職済み)が暴行容疑で逮捕された事件をはじめ、各地で園児に対する不適切な保育事案が発生していることを受け、厚労省と内閣府は12月8日までに、都道府県や全国の自治体に対して、2021年に示された「不適切な保育の未然防止及び発生時の対応についての手引き」(手引き)などに基づき、改めて保育施設に適切な保育を行うよう求める事務連絡を行った。幼稚園を所管する文科省も8日、同様の趣旨の事務連絡を都道府県教委などに対して通知した。
保育所や認定こども園などに対しては、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 (1948年厚生省令) で「児童福祉施設の職員は、入所中の児童の心身に有害な影響を与える行為をしてはならない」と不適切な保育や虐待を禁止する規定がある。保育所保育指針解説 (2018年) でも「子どもに対する体罰や言葉の暴力が決してあってはならないことはもちろんのこと、日常の保育においても、子どもに身体的、精神的苦痛を与えることがないよう、子どもの人格を尊重するとともに、子どもが権利の主体であるという認識をもって保育に当たらなければならない」ことが示されている。さらに「手引き」でも不適切な保育の未然防止や発生時の対応にあたっての、行政担当者や保育関係者の連携の在り方が整理されている。
これらの規定などを背景に今回の事務連絡では、初めは虐待ではなく少し気になりつつも見過ごされてしまうような不適切な保育であっても、それが繰り返されていくうちに虐待につながっていくこともあり得るとして、早い段階で改善を促し虐待を未然に防止することが重要として、「手引き」 や全国保育士会が作成した「保育所・認定こども園等における人権擁護のためのセルフチェックリスト」も活用し、保育の在り方を点検するよう求めた。
さらに、虐待が疑われる事案が発生した場合の対応について、保育所などは状況を正確に把握した上で、市区町村や都道府県に設置されている相談窓口や担当部署に対して、速やかに情報提供し、今後の対応について協議することが必要であるとした。加えて不適切事案や虐待が起きてしまった場合には「隠さない」「うそをつかない」誠実な対応が重要と強調。その上で、園長、副園長、教頭、主幹保育教諭、主任保育士などといった園の中でのリーダー層の意識と適切な対応が必要不可欠であるとした。そのため、各市区町村と各都道府県では園長や主任保育士らを対象とした会議や研修の機会を通じ、こうした意識の醸成や適切な対応についての周知徹底をするよう求めている。
また、保育所などが組織として適切な対応を行わない場合、虐待が疑われる事案の発見者は一人で抱え込まずに速やかに市区町村や都道府県に設置されている相談窓口や担当部署に相談することが重要としている。