静岡県裾野市の保育園をはじめ全国の保育施設などで虐待が疑われる不適切保育が相次いでいることを受け、厚労省と文科省、内閣府は12月27日、全国の自治体と園に対して事案発生時の対応体制や現場の実態に関する調査を始めた。
裾野市の事件では市の調査で、1歳児クラスを担当していた当時の保育士3人(暴行容疑で逮捕後に処分保留で釈放)が、園児の足を持って宙づりにしたり、頭をたたいたり、暴言を吐いたりするなど不適切な保育をしていたことが明らかになっている。市側も事案の把握から公表までに時間がかかったことが問題視された。この他にも富山市や仙台市などでも不適切保育が相次いだ。
国は裾野市の事案後に都道府県や全国の自治体に対して今月、2021年に策定された「不適切な保育の未然防止及び発生時の対応についての手引き」(手引き)などに基づき、改めて保育施設に適切な保育を行うよう求める事務連絡を行ったところで、さらに実態調査に乗り出したもの。
具体的には、自治体に対しては個別事案の把握の経緯、相談窓口の整備と周知、事実認定の手順、情報共有、事実確認後の対応などのほか、虐待の未然防止に向けたガイドラインなどの策定、啓発や研修の実施、通報を行いやすい環境整備について調査を行う。一方、園に対しては、個別事案の件数や対応状況などのほか、自治体への情報提供に係る方針、施設内で事案を共有する機会の有無、手引きやセルフチェックリストの周知状況、不適切な保育の未然防止に向けて自治体に求めるサポートなどについて尋ねる。22年4月1日から12月1日までの期間の内容について回答し、締め切りは23年2月3日。
調査結果については、個別事案に対して行政指導につなげることを主眼とせず、不適切な保育が施設内外への相談を通じて早い段階で改善を促され、虐待を未然に防止できるような環境・体制作りにつなげていくために利用するとしている。さらに保育現場において安心して保育に臨むことができるよう、保育実践における不安に寄り添えるような支援にも生かしていくという。