汚職による採択期間中の教科書会社変更 文科相が理解示す

汚職による採択期間中の教科書会社変更 文科相が理解示す
藤井寺市の教科書変更について、後押しする意向を示した永岡文科相
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 市立中学校の教科書採択を巡る汚職事件を受け、大阪府の藤井寺市教育委員会が採択期間中に使用を打ち切って別の会社の教科書に変更することを決め、永岡桂子文科相は1月13日の閣議後会見で、「(教科書採択は)高い公正性と透明性が求められる」と理解を示し、省として必要に応じて後押しする意向を明らかにした。

 報道によると2020年、教科書選定委員だった元市立中学校校長が、各社の教科書を比較する調査員に任命予定だった教員の氏名や調査員が作成した資料を、大日本図書(東京都文京区)に漏えい。加重収賄などの罪で昨年11月に在宅起訴された。大日本図書の元取締役と社員も贈賄罪で略式起訴され、罰金の略式命令を受けている。

 事件を受け、藤井寺市教委は1月6日、市内3校の中学校の数学と保健体育で使用している同社の教科書を、来年度から別の教科書会社に変更することを決めた。同市教委によると、現在の教科書は2021年度から4年間使用予定だった。担当者は「教科書の内容は適切かもしれないが、裁判で検定通過までの経過が不適切だったことが明らかになったため判断した」と説明した。新しい教科書については2月末までに採択させるという。

 一方、同市の公立中学校の保健体育については3年間、同じ教科書を使用しており、4年ごとの採択を挟む場合でも教科書変更を行っていない。同市教委は「すでに一部のカリキュラムを終了させている新2、3年生については教員の負担も含め、教科書の変更が適切かどうかは慎重に判断したい」とした。

 教科書の採択を巡っては、15~16年度にかけて、教科書会社10社の不適切行為が相次いで発覚。これを受け、教科書無償措置法が16年に改正され、不公正な行為があった場合は、採択期間の途中であっても、他社の教科書に変更が可能になった。文科省によると、採択途中での変更は初めてだという。

 永岡文科相は閣議後会見で「教科書は全ての児童生徒が必ず使用するもので、その採択には高い公正性と透明性が求められる。採択の公正性に疑念を生じさせる事案が発生し、このような事態となったことは極めて遺憾であると考えている」と強調し、「文科省として、今後の対応を注視するとともに、必要に応じて助言をしたい」と考えを示した。

 大日本図書では去年7月にも営業担当幹部らが、茨城県五霞町の教育長と会食。教科書協会の自主ルールで禁じられている飲食費の支払いを行ったことが明らかになっている。同社では現在、これらの事案について、外部の弁護士を中心とした特別調査委員会を設け、原因分析や再発防止対策を策定している。同社の担当者は「今月末には調査結果などを公式ホームページに掲載する」と話した。

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