新型コロナウイルスの感染拡大による小中学校の行事への影響について、2021年度は20年度に比べてコロナ禍でも中止率が下がっていたことが、東京大学大学院の中村高康教授らが行った文科省の委託調査で分かり、1月18日にオンラインで開かれた中教審初等中等教育分科会で概要が公表された。元通りの実施にこだわるよりも計画を変更して実施するなど学校に一定のノウハウが蓄積され、中止が回避される傾向がでてきたことが背景にあるとみられている。
調査は全国の都道府県・市区町村教委、学校(小学校4030校、中学校4006校)、児童生徒(小学校400校の小学5年生、中学校360校の中学2年生)、児童生徒の保護者を対象に、第3~4波の21年1~3月と第5~6波の21年12月~22年2月の時期に実施され、有効回答を分析した。
コロナ禍の20年度と21年度における学校行事の中止状況を比較すると、改善幅は「集団宿泊活動」が小学校で25.8%、中学校で30.0%。「遠足」は小学校で24.6%、中学校で24.6%、「芸術鑑賞会」は小学校で23.9%、中学校で23.1%と、それぞれ中止率が大幅に下がった。「入学式」「卒業式」についてはもともと20年度も中止はほとんどなく、規模や時期などを変更して実施したためという。
中村教授らは、コロナ禍での行事の中止率に影響を与える要因としては、具体的には教職員の多忙化と児童生徒の様子の悪化(遅刻早退・欠席をしたり、生活リズムが崩れたり、家庭のことで相談したりなど)とみて、これらが学校行事の中止率を高める傾向があり、そのような学校では、日常的な学校生活を維持することが優先され、行事まで手が回らなかった可能性を指摘。
調査からは保護者や地域住民が参加する学校の行事中止率は低い傾向があり、教職員のマンパワーの不足を補ったほか、保護者やコミュニティーとの関係がコロナ流行前から構築されていたことで、状況の変化に即した臨機応変な対応ができるようになった可能性も指摘した。
緊急事態宣言日数が長かった地域では20年度に中止率が高くなりやすい傾向にあったが、21年度ではその傾向はなかった。21年度は感染状況への対応の仕方について、学校側が工夫して実施するノウハウが蓄積されたと考えられるという。
一方、行事中止が児童生徒に与えた心理的な影響については、「運動会」や「遠足」が中止された小学校の場合に児童の不満の意識が高いという結果となった。特に行事の中止率がより高い学校で、成績が下位の児童の不満の意識が高いという関連性がみられた。勉強面では自信が持てていない児童にとって、行事は学校生活で重要な機会であった可能性があるという。中学校では部活動の縮小について「とても残念だった」「どちらかといえば残念だった」の割合は7割以上。部活動に熱心に取り組む生徒であるほど、また学校全体として部活動が盛んであると実感している生徒であるほど、「残念だった」との回答割合は高い傾向がみられた。