高校地図教科書1200カ所訂正 永岡文科相「検定は適切」

高校地図教科書1200カ所訂正 永岡文科相「検定は適切」
閣議後会見で検定は適切だったとの認識を示した永岡文科相
【協賛企画】
広 告

 教科書大手「東京書籍」(本社:東京都北区)が発行した地図の教科書に約1200カ所の訂正が見つかり、再配布をしている問題について、永岡桂子文科相は2月21日の閣議後会見で「検定自体は適切に行われたと認識している」と述べ、検定に問題はなかったとの考えを示した。

 約1200カ所の訂正が明らかになったのは、東京書籍が発行した「新高等地図」。高校1年生向けに作られ、文科省の検定を経て、今年度から約3万6000冊が使われている。東京書籍によると、昨年、高校教員からの指摘を受け、社内で確認したところ、相次いで誤りが発覚したという。

 索引のページや誤字などが約1000か所あったほか、南アメリカのホーン岬と南極半島沖を隔てる海峡「ドレーク海峡」を「マゼラン海峡」。ナミビアにある「ナミブ砂漠」を「ナビブ砂漠」と記すなど、地図上の地名の誤りも約50カ所あった。

 加えて、ウクライナの首都の表記が「キエフ」から「キーウ」に変更されるなど、客観的情勢の変化や統計資料の更新に伴う修正も約150カ所あり、合計で1197カ所の訂正となった。

 この教科書は2020年4月の文科省提出に向け、19年2月から編集作業を開始。18年3月に告示された学習指導要領に基づいた新しい内容になることや、判型をB5判からA4判に変更することなどから、これまでの教科書のデータを使用するのではなく、一から作り直したという。

 東京書籍編集局の倉田佳典社会編集部長は、原因について、校閲作業が不十分だったことに加え、「タイトなスケジュールの中、コロナ禍による在宅勤務も相まって、担当者や業者とのコミュニケーションが十分ではなかった」と説明。先月から、希望する学校に訂正した教科書を再配布しており、21日現在で、約2万5000冊を配ったという。

 今回の事案について、永岡文科相は21日の閣議後会見で、「供給前に発行者において、校正作業を徹底して適切に訂正を行うことで防げたと考える。訂正が供給後の対応になったことは大変遺憾」と話した。

 学校で使用する教科書は、文科省が教科用図書検定基準に基づいて内容を審査。同基準の正確性および表記・表現の項目には、「図書の内容に客観的に明白な誤記、誤植または脱字がないこと」と記してあり、ふさわしくない文言については、再度検討するよう出版社に伝えられる。

 会見で検定そのものに問題がなかったかと問われた永岡文科相は、「訂正箇所の多さが検定の不適切さを示すものではないと考えている。検定手続き自体は適切に行われたものと認識している」と強調。「現行の仕組みのもと、引き続き適切な審査に努める。発行者に対して、校正作業に万全を期し、このような事態がないよう強く指導したいと考えている」と述べた。

 東京書籍は19日、ホームページ上に謝罪文を掲載。「各学校の教職員や生徒に多大なる迷惑をおかけし、深くお詫びする。これを踏まえ、当該書目を含め教科書の編集制作体制や工程管理の改善を行い、再発防止に全力で取り組む」と陳謝した。

広 告
広 告