「正規教員増員と少人数学級の実現を」 参院予算委公聴会で本田教授

「正規教員増員と少人数学級の実現を」 参院予算委公聴会で本田教授
参院予算委公聴会で発言する本田教授(参議院インターネット審議中継から)
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 2023年度予算案について専門家から意見を聞く参議院予算委員会の公聴会が3月9日に開かれ、本田由紀東京大学大学院教育学研究科教授は、日本の教育の改革のためには、「正規教員の増員と少人数学級によるきめ細かい公教育の実現」や「学校歴社会から学習歴社会への転換」「保護者の経済的、精神的な負担や責任の軽減」が必要とし、これらの解決が「結果的に少子化対策になる」と述べた。

 席上、本田教授は現在の教育状況について「日本の児童生徒は非常に学習意欲が低く、学習の意義、学んでいる内容の意義や面白さ、楽しさといった認識が国際比較で見ても低い。学校教育に対する子供たちの不適応が不登校や自殺という形で現れている」とし、「教員の長時間労働、過重労働は世界最悪でその結果、なり手不足にも直面している。教育費も高等教育の学費が高いことはもちろんだが、学校外教育にかける家庭のお金が毎年増え、それが非常に圧迫している」と指摘した。

 本田教授は、このような状況が児童生徒の中に学習することへの拒否感を形成するため、社会に出て仕事に就いてからの人材育成、学び直しが機能不全に陥っているとし、技術の進展が著しい社会においては経済的なダメージや、積極的に社会の担い手としての役割を果たしたいという発想の低さにつながっているとした。さらに「保護者の経済的な負担や子育てに関する不安が著しい。少子化が進めば、この社会を維持していくだけの人口がこれから保っていけるのかと、非常に不安が大きい状況になっている」と述べた。

 これらの背景としては、教員1人が担当する児童生徒数が多いために、一人一人の個性や思考、感性に合ったきめ細かい教育ができておらず、そのため保護者は学校外教育でわが子だけはという行為に駆り立てられるとした。加えて、子供たちが学ぶことの意味意義を感じることができないのは、高校や大学における入試で選択というよりも選抜されるのかどうかの不安の中、学業に取り組まなければならなくなっているためとの認識を示した。保護者も子供に関する責任を第一義的に負わされて、「ある意味、脅迫的な状況のもとに置かれた中で、子供を生むことなど怖くてできないというような状況がもたらされている」と説明した。

 その上で、本田教授はこれらの課題解消策を提示。「教員を増やして少人数学級を実現して教育を充実させることで、学校外教育に多額のお金をかけたり、さまざまな不安に苛まれたりせずに出産したり、子育てをしたりできる。しかも教員の過重労働の是正にもつながる」と主張。具体的には「まずは非正規の方々に正規の教員になってもらい、過去の採用倍率が高かった時期に教職に就けなかった教員免許取得者の方々を積極的に採用していく。あるいは奨学金返還特別免除制度を復活させるなども含め、あらゆる手段を取って教員の増員を推進していく必要がある」と述べた。

 また、高校以上の学校段階で複数の教育機関にわたる単位修得を緩和し、どこの学校に所属しているかという学校歴社会ではなく、何を学んだかが重視される学習歴社会への転換が必要であるとした。家庭に重い責任を負わせるのではなく、どのような家庭に生まれた子供も社会が確実な成長を保障するという理念を明確に打ち出し、いわゆる家族主義を脱却するという方針を示すことなどが少子化対策にもつながるとした。

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