わが国の未来を担う人材の育成に向け、高等教育の在り方を検討している政府の教育未来創造会議ワーキンググループ(WG)の会合が4月4日、文科省内で開かれ、コロナ後のグローバル社会を見据えた第2次提言の素案が提示された。岸田文雄首相は同会議に対して「日本人学生の海外留学者数50万人の実現」を指示しており、素案には国際的な人材獲得競争の中、日本人留学生派遣の強化・支援策が盛り込まれた。永岡桂子文科相は会合で「新しい資本主義を実現するためには、人への投資を一層進め、海外に挑戦することができるような経済的支援の充実を図ることが大変重要だ」と述べた。同会議では今月中に提言を取りまとめる見込み。
この日示された素案によると、まずコロナ禍で停滞したグローバルレベルでの人の流れが徐々に回復し、世界各国が国境を越えて人材獲得を進める中、日本の成長をけん引する高度人材についてもグローバルな視点や経験が不可欠で、そのための投資が必要と指摘。留学生の派遣・受け入れの強化や卒業後の留学生の活躍に向けた環境整備、教育の国際化の推進を通じて人的交流の活性化や多様性のあるイノベーション人材の育成強化を図り、新たな価値を持続的に創出する社会を構築することは、多様な幸せと社会全体の豊かさの実現につながり、国益に資すると同時に世界平和の意義も有するとした。
日本人学生の派遣については若者の内向き志向や経済的負担、語学力不足、情報不足を課題に挙げながら、このような状況を打開するために、情報格差の是正や奨学金のブランド力強化や寄付による財源確保を含めた経済支援の充実、国内大学における英語教育や英語によるプログラムの充実と海外大学との単位互換や授業料相互免除の促進、学生の就職プロセスにおける海外留学の評価促進などの必要性を盛り込んだ。加えて心理面のハードルを下げるとともに費用・時間面での利点があるオンライン学習を留学へとつながる取り組みを促進させることとし、初等中等教育段階での英語教育や国際理解教育、課題発見・解決能力を育む学習、主体性・協働性を育む教育の推進も求めた。
これらを踏まえ、2033年までに日本人学生の海外留学者数を、長期15万人(コロナ前6.2万人)、中短期23万人(同11.3万人)、高校段階12万人(同4.7万人)の計50万人に、外国人留学生を高校段階での大幅増を図り40万人(同31.8万人)に目標を設定した。
日本人学生の海外留学者増に向けた具体的方策として、「SNSを効果的に活用した留学の意義、奨学金制度の広報強化」「海外留学支援制度における海外大学卒業生のネットワークを構築するとともに活躍事例の収集・発信によるブランド力強化」「単位認定を伴う中長期留学や海外大学で学位取得を目指す学生への経済的支援の充実」「高校からの留学促進、オンライン留学・交流の取り組みの促進、官民協働による『トビタテ!留学 JAPAN』の発展的推進」を提言。
さらに「教員養成段階の留学や採用後の海外経験機会の拡充、実践的な教員研修の充実などを通じて教員の英語教育・国際理解教育の指導力強化」「英語キャンプ、海外派遣などを通じた国際交流体験や1人1台端末を活用した海外とのオンライン交流の促進、国際的な留学交流団体との連携」「英語4技能(読む、書く、聞く、話す)の育成に向けた指導方法の改善・共有と、デジタルを活用したパフォーマンステストの実施促進」「児童生徒が主体的に課題を発見し、多様な人々と協働しながら課題を解決する探究学習を推進するとともに、高校段階におけるグローバル人材育成に資する拠点校の整備など国際的な中等教育機関の整備推進・運営支援」などを盛り込んだ。