スポーツ庁はこのほど、今春から始まった公立中学の休日における部活動の地域移行に関する情報を集約した、「部活動改革ポータルサイト~学校部活動の地域連携・地域クラブ活動への移行に向けて~」を開設した。自治体、保護者・生徒、団体・指導者、地域それぞれに向けたコーナーに分けて、関係資料や各地の取り組み事例などを掲載している。その中で、地域移行後も指導者として部活動に携わる教員の兼職兼業の在り方についての手引きも紹介。地域移行にあたっては、教員以外の指導者不足が懸念される地域もあり、休日の活動でも教員にかかる期待は大きい。スポーツ庁では手引きでケースに応じた兼職兼業の仕組みを明らかにして、適切な運用を呼び掛けている。
団体・指導者向けのコーナーで示されたのが兼職兼業についての手引き。そもそも教員はこれまでも兼職兼業が可能で、学校の働き方改革を踏まえた「公立学校の教師等の兼職兼業の取扱い等について」(2021年2月17日付、文科省初中教育企画課長通知)でも改めて留意点が示されている。23年度からの3年間を部活動の改革推進期間としたガイドラインで兼職兼業について規定や運用を改善するよう求められたことから、手引きで地域クラブ活動での指導を希望する教員が円滑に兼職兼業できるよう必要な手続き、留意点、具体例などがまとめられた。
手引きでは、地方公務員である公立学校の教員は本人が希望し、地方公務員法や教育公務員特例法の規定に基づき、教育委員会から兼職兼業の許可を受けた場合に報酬を受け取ることが可能になるとしている。地域移行に際しての手続きとしては、運営主体が民間の場合には、その兼職兼業希望先から依頼を受けた上で、上司である校長などへ相談・了承を受け、教委から許可を得て業務に従事することとなる。
一方、休日の業務時間外に無償もしくは交通費程度の支給でボランティアとして指導する場合には教委の許可は不要で、事前に上司への相談も一般に必要ないとしている。ただし、いわゆる謝礼がある場合には教委の許可は必要となる。大会などのスタッフとして参加する場合には、主催者が官民を問わず報酬が発生することになるので、主催者から依頼を受けた教員は、校長へ相談し、了承を受けた上、教委の許可が必要となる。どのような場合でも事故などに備えて、個人で保険に加入しておくことが望ましいとしている。
教委に対する留意事項としては、兼職兼業を希望しない教員が周囲からの要望や同調圧力などから断れないような事態に陥ることがないよう、本人の意思をしっかりと確認するよう求めている。
このほかポータルサイトでは、自治体に対しては、部活動の地域連携・地域移行で活用できる予算や、全国各地ですでに地域移行に向けて取り組まれている事例の紹介などを掲載。団体・指導者に対しては兼職兼業のほか、競技団体ごとの部活動の練習や指導の手引きを、保護者・生徒、地域に対しては、地域移行に向けたガイドラインを紹介し、国の方針などを説明している。
このポータルサイトについて、スポーツ庁地域スポーツ課では「部活動の地域移行に向けて必要な情報を1カ所に集め使いやすくした。今後もサイトを更新し、新たな情報を追加していきたい」と話している。