国際競争力の高い人材を育成するために、近年注目を集めているアントレプレナーシップ教育(起業家教育)の在り方を考えるイベントが4月22日、千葉大学西千葉キャンパス(千葉市稲毛区)で開かれた。小中高で人材育成に携わる戦略コンサルタントや文科省の担当者など、産官学の関係者4人が登壇。パネルディスカッションでは参加した学校教員や学生など約80人の質問に答える形で、活発に意見交換した。
創造性や探究心、リーダーシップといった起業家的資質を育むアントレプレナーシップ教育においては、政府が昨年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を策定。その基盤となる高校生への教育を強化するため、文科省は昨年度第2次補正予算で10億円を計上したほか、今年1月には機運を高める旗振り役として、10人の「起業家教育推進大使」を任命している。
ディスカッションに先立ち、文科省科学技術・学術政策局産業連携・地域振興課産業連携推進室の加藤浩介室長補佐がアントレプレナーシップ教育について、「新しい事業を起こすための教育ではなく、社会の変化から課題を捉え、新たな価値や課題解決に結び付けていく精神そのもの」と基本姿勢を説明。その上で、自分がやりたいことを論理的に説明できなくても、リスクを追えるような範囲であればやってみることで、協力してくれる仲間との出会いや失敗を含めたさまざまな気付きがあるとした。
パネルディスカッションは、4人のパネリストが参加者からの質問に答える形で展開。コンサルティング大手「アクセンチュア」の藤井篤之氏は福島県の農業高校で経営やマーケティングの教育プログラムを提供した経験を踏まえ、「失敗を体験させることもプログラムには含まれる。何を成功させて、何を失敗させるかを考えること自体が、社会においての教育で重要になると思う」と述べた。
さらに地方におけるアントレプレナーシップ教育については、「6、7割は大都会に吸収されるが、残りの人が地域に残って、いろいろな力を発揮していくモチベーションにつなげることが重要」と強調。その上で「教員がいないとか、若い人がいないとかではなく、新しいことをやろうとしている人に対して、周囲が許容できるかが一番のポイント」とコメントした。
また、大学発のベンチャー企業を立ち上げた千葉大学の片桐大輔特任教授は、公立小学校の教員がアントレプレナーシップを身に付ける方法を問われると、自身の起業の際にも行ったという読書会を推奨。「2人とか3人だけでもいい。示唆に富む本を月1冊読んで、内容について意見を言い合う。そこから始めるだけでずいぶん違う」とアドバイスを送った。
イベントはNPO法人「企業教育研究会」が主催。同法人では設立20年を記念し、今年1年を通して、7つのテーマで産官学の第一人者を招いて意見交換する企画を行うことにしており、今回はその第一弾。次回は5月20日、主権者教育をテーマに開催される。