教員不足、昨年4月より深刻化か 妹尾氏や末冨教授が調査結果公表

教員不足、昨年4月より深刻化か 妹尾氏や末冨教授が調査結果公表
教員不足の実態調査結果を公表する「#教員不足をなくそう緊急アクション」のメンバー(写真右から、妹尾氏、末冨教授、小林理事)
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 学校業務改善アドバイザーの妹尾昌俊氏や日本大学の末冨芳教授らが立ち上げたプロジェクト「#教員不足をなくそう緊急アクション」は5月10日、文科省で会見を開き、公立小中学校1798校が回答した教員不足についての実態調査結果を公表した。今年4月の始業式時点で「教員不足が発生している」と回答したのは、小学校で20.5%、中学校で25.4%と、昨年度の同時点と比べ小中学校ともに約5ポイント上昇していた。妹尾氏は4月の多忙な時期に実施したことや、回答した地域に偏りがあることなどを考慮する必要があるとしつつも、「昨年4月より深刻化している可能性が高い。どんどん事態は悪い方向にいっているのではないか」と危機感をあらわにした。一方、末冨教授は「教員不足は、子どもたちに危機を引き起こしている。子どもを真ん中で考え、子どもたちの危機だと理解すれば、教員になりたくなる人を増やすことが大切だと思う人が増える」と、社会全体で教員不足の問題に立ち向かう必要性を訴えた。

 調査は、全国公立学校教頭会経由で公立小中学校の副校長・教頭を対象にウェブフォームで実施した。調査結果によると、今年度の始業式時点で「教員不足が発生している」と回答したのは、小学校で20.5%、中学校で25.4%を占めた。2022年度4月の始業式時点での教員不足の状況についても聞くと、小学校が14.6%、中学校で19.8%であり、小学校で5.9ポイント、中学校で5.6ポイント悪化していた。また22年度10月は小学校で28.8%、中学校で25.2%、22年度3月は小学校で31.6%、中学校で27.0%となっており、年度後半になるにつれて教員不足が深刻化している実態が明らかになった。

 今年度の始業式時点での教員不足への対応を聞いたところ、多かったのは小学校が「担任不足のため、本来は学級担任でない教員(加配措置を除く)を充てている」(29.8%)、「担任不足のため、少人数指導担当などの加配の教員を充てている」(27.8%)、中学校が「免許を保有する教員がおらず、 臨時免許の発行で対応している教科がある」(31.4%)と、小中学校ともにぎりぎりの状況で運営している様子が伺えた。「特別支援学級の学級数を減らしている」(小学校7.5%、中学校2.9%)、「免許を保有する教員がおらず、 授業が実施できない教科がある」(小学校6.7%、中学校13.1%)など、児童生徒に何らかの影響がでた学校もあった。

 自由回答では、「病休になった教員に対して講師が不足して、2学期はその教科が実施できなかった」(高知県中学校)、「ただでさえ、1人で担任ができない教員、2人でもできない教員が増える一方の状況の中、担任ができない教員にもやってもらわねばならず、その結果、年度途中で休職者が増え、年度途中からできる講師などいるわけもなく、他の教員の負担も増え、担任ができる教員までも休職するといった、休職者がどんどん増していくという負の連鎖がどこでも起きている」(愛知県中学校)など、現場の悲痛な声が寄せられた。

 また「特別支援学級の担任が育休に入ったため教務主任が入ったが、特支は経験がなく教材研究が大変そうだった。苦肉の策で自・情学級は2クラス合同で授業が行われる時間もあり、少人数が保証されなくなった」(埼玉県小学校)、「別室登校児童の対応が手薄になった」(千葉県小学校)など、支援ニーズの高い児童生徒にしわ寄せが及んでいる現場も目立った。

 この結果を踏まえ、同プロジェクトは前年に引き続き、緊急提言を公表。「最優先事項の1つ」と強調された「教員が担う業務の見直し」の項目では、▽特別支援コーディネーターの専任化、養護教諭の複数配置の推進など、支援ニーズの高い児童生徒に対する体制の充実▽保護者や地域住民との学校の働き方改革の目的理念の共有、働き方改革や児童生徒・学校の支援体制を、学校運営協議会などを通して推進する体制の整備・推進――などを新たに盛り込んだ。

 会見に参加したSchool Voice Project理事で元公立小学校教員である小林大介氏は「現場の教員が子どもたちのために、自分の力を100%注げていない。最高の授業をしたいし、子どもたちが悩みや困りごとを抱えていたらできる限り寄り添ってあげたい。それを自分1人だけでなく、チームで対応したい。しかし、時間も心も体力も、人員も余裕がないとなると、何かを諦めなければいけなくなる。一教員の裁量でセーブできるのは授業の質や、子どもとの関わりの密度になってしまう」と、教員不足が児童生徒に及ぼす影響について説明した。

 末冨教授も「大学の教員養成の現場では、『このまま働き方改革、進むんですか?』という質問が非常に多い。働き方改革が進むのであれば教員になりたいと思っているから(質問する)。現状は依然深刻だが、転換は始まっている。特に教員免許を取っている若者が、安心して受けられるように体制の整備が急がれる」と早急な改善を求めた。

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