障害のある学生の修学支援検討会議が初会合 大学受験の影響も議論

障害のある学生の修学支援検討会議が初会合 大学受験の影響も議論
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 来年4月に一部改正される障害者差別解消法が施行されるのを受け文科省が立ち上げた、障害のある学生の修学支援について検討する有識者会議の初会合が5月18日、オンラインで開催された。同法の施行に伴い、これまで私立大学で努力義務とされていた障害のある学生に対しての合理的配慮が義務化される。会合では私立も含めた大学など高等教育機関の具体的な合理的配慮や支援体制の在り方を議論するほか、大学入試を巡る合理的配慮についても検討を重ねる。

 初会合では文科省側が、全国の大学や短大を対象に日本学生支援機構が実施した調査結果を提示。それによると障害のある学生は2021年5月時点で4万744人と、10年前と比べ約4倍に増加していた。同省は、特に精神障害、発達障害で増加傾向にあると指摘した。障害のある学生の在籍率は21年5月時点で、大学が1.19%、短期大学が1.48%、高等専門学校が4.48%だった。

 障害者差別解消法は、障害者に対する「不当な差別的取り扱い」や「合理的配慮の不提供」を差別と規定し、国公立大学を含む国や地方公共団体などに差別の解消に向けた具体的な取り組みを求めている。来年4月に施行される改正法では、私立大学を含む事業者が新たに盛り込まれる。今年3月に閣議決定された政府の第5次障害者基本計画によると、各大学に授業や施設などの「合理的配慮を含めた必要な配慮」を求めるほか、▽相談窓口の統一▽紛争の防止、解決についての調整機関の設置▽専門知識や技術のある障害学生支援担当者の養成、配置――などを、今年度より5年間かけて推進する。

 初会合では、今後議論するテーマを①障害学生支援の基本的な考えに関すること②学内の体制整備や合理的配慮の提供に関すること③紛争の防止・解決に関すること④大学等と地域・社会資源との連携に関すること⑤障害学生の就職支援に関すること――の5つに整理。大学入試を巡っては、③で「入試における合理的配慮の提供に関する紛争の防止・解決に関すること」と具体的に示した。

 委員からは、大学入試への影響についてきめ細やかな議論が必要との意見が上がった。慶應義塾大学経済学部教授の中野泰志委員は「(私立大学の合理的配慮が義務化され)大学入試の形態が複雑になる可能性がある。例えば全ての私立大学が点字で入試対応をするとなった場合は、パンクしてしまう可能性がある。国として入試についてのさまざまな制度設計を示さなければならない」と、国がある程度の指針を示すべきと指摘した。

 全国障害学生支援センター代表理事の殿岡翼委員は、大学入試以前の説明会やオープンキャンパスなどで、障害のある受験生たちに差別的な言動があった事例を報告。「学生自身の不安はなかなか解消されていない。総合型選抜で障害を理由とした減点をするなど『不当な差別的な取り扱い』を各大学が『していない』と明示することが、障害のある学生の安心感につながる」と強調した。

 他には、オンラインやオンデマンドなど多様な授業形態に合わせた合理的配慮の在り方や、各大学の実態に即した支援体制の構築などについて指摘があった。

 同会合の座長には、筑波大学人間系の竹田一則教授が選任された。

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