「給特法見直し含め、教員待遇の抜本改善を」 骨太の方針原案

「給特法見直し含め、教員待遇の抜本改善を」 骨太の方針原案
「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針)の原案が提示された経済財政諮問会議(首相官邸のホームページより)
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 政府は6月7日、経済財政諮問会議を開き、2024年度の予算編成方針となる「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針)の原案を示した。長時間労働やなり手不足が深刻化している公立学校の教員について、社会全体の理解を通じて慣習にとらわれない業務の適正化を推進するとともに、残業代の代わりに月給の4%を「教職調整額」として支給することを定めた給特法の見直しを含め、抜本的に待遇を改善していく方針を盛り込んだ。一方、自民党文部科学部会が、教員の「働き方改革」を進める財源として明記するよう求めていた「教育国債」への言及は見送られた。

 政府は今回の原案をたたき台として、与党や省庁間などで内容を詰める。こうした調整の過程で、原案は修正される可能性がある。会議後に記者会見した後藤茂之経済財政担当相は「6月中旬の閣議決定を目指す」と説明した。

 原案では、「給特法などの枠組みも含め、教師の処遇を抜本的に見直す」と明記。具体的な方法として、教職調整額の見直しに加え、頑張っている教員が報われるようにするための各種手当の見直しなどにより、職務の負荷に応じたメリハリのある給与体系づくりを検討するとした。待遇を見直す際には、高度な専門職としての教職の特殊性や、優秀な人材を確保するために教員の優遇を定めた人材確保法の趣旨を踏まえる考えを示した。

 一方、待遇の改善と併せて、教員の負担軽減を進める考えも盛り込まれた。実質的な残業時間にあたる「時間外在校等時間」を国の指針が定めた上限(月45時間)に抑えるための具体的な対策を検討するほか、学校運営協議会などを活用して教員の負担軽減に対する社会全体の理解を促すとともに、慣習にとらわれない業務の適正化も進める。また、25年度までかけて段階的に進められている公立小学校の「35人学級」の多角的な効果検証を踏まえ、公立中学校についても35人学級化を検討していく考えも、これまでの骨太の方針から引き継いでいる。

 こうした政策の財源について、5月末に開かれた自民党文部科学部会では、「教育国債」と明記するよう求める声が上がっていた。だが、今回の原案では「安定的な財源を確保しつつ、計画的・段階的に進める」との表現にとどまった。

 教員の負担軽減や待遇改善を巡っては、自民党の特命委員会(委員長・萩生田光一政調会長)が5月16日、教員の時間外勤務を「将来的に月20時間程度」とするために学校のマンパワーを大幅拡充するとともに、現行は給与の4%と給特法で規定されている教職調整額を「少なくとも10%以上」に引き上げることを柱とする提言を取りまとめた。一方、永岡桂子文科相は同22日、学校の働き方改革や教職調整額の在り方を含めた教員の待遇改善、学校の指導・運営体制の見直しの具体策を検討するよう中教審に諮問。来春までには具体的な方向性が示される見通しだ。

 骨太の方針の原案はこのほか、子どもたちが1人1台のタブレット端末などを使って学ぶ「GIGAスクール構想」の端末更新を見据え、家庭環境や教員の指導力の格差の解消などを本格的に進める方針も示した。地方自治体からは、更新費用を国が負担するよう求める声が上がっているが、今回の原案では費用負担の在り方については明言を避けた。

 一方、4月に施行されたこども基本法に基づき、子ども政策に関する中長期的な基本方針などを一元的に定めた「こども大綱」について年内をめどに策定すると明記。同じく4月に発足したこども家庭庁を司令塔として、「政府全体でこども施策を強力に推進する」とした。子育て支援の強化に向け、学校給食を無償化する上での課題整理に取り組むほか、子育てを住まいと周辺環境の観点から応援する「こどもまんなかまちづくり」も進める。

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