ICTを活用した個別学習や協働学習など学習形態の多様化に向けた学校施設の空間づくりについて、国立教育政策研究所は6月28日、報告書を公開した。児童生徒用のロッカーや掃除用具入れなどを教室外に設置して学習スペースを確保したり、教室の壁面にホワイトボードを設置し学習に活用したりなど、具体的なアイデアをまとめた。また、これからの学校空間を考える際のキーワードとして、「コモン/シェア(専有しない)」「シームレス(連続性)」「リダンダンシー(冗長性)」など6つの言葉を掲げた。
報告書は、2022年3月に取りまとめられた「新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について」の最終報告にある支援策の一つ。アクティブ・ラーニングやICTを活用した学習などに積極的に取り組む学校にアンケートや現地調査を実施した上で、全国の教委向けに学習空間づくりのポイントをまとめた。
報告書では、各教室の種類や目的に応じて空間づくりの具体的なポイントを整理した。普通教室では▽机寸法の拡大。自由な配置転換に対応できる教室スペースを確保する▽児童生徒用ロッカー、掃除用具入れ、配膳台などを教室の外に配置する▽壁面を確保し、教室の正面性をなくす――などと示した。事例としては、教室背面のロッカーをなくした代わりに、ホワイトボードを設置して学習に生かしている福井市至民中学校や、教室前に生徒のロッカーコーナーを設けた埼玉県川口市立高校附属中学校などを紹介した。
多目的スペースでは▽教室に連続して学習の場を生み出す▽視覚的連続性を持たせる▽Wi-Fi環境を整える――などをポイントとして挙げた。
さらにこれからの学校空間を考える際のキーワードとして、「コモン/シェア(専有しない)」「ダイバーシティ(多様性)」「シームレス(連続性)」「モードチェンジ(時間や場面による空間の変容)」「リダンダンシー(冗長性)」「ウェルビーイング(心地よさ、五感に優しい)」の6つを掲げた。
例えば「コモン/シェア」では「学年や複数クラス、あるいは教科等によるユニット(コモンズ)を構成し、クラスルームとなる教室も、学習場面では特定のクラス専用の場とせずにクラスや集団を超えて、活動の人数や活動の性状に応じてお互いが使えるようにする」と、「ウェルビーイング」では「変化のある空間、好きな場所が選べる、五感に優しい空間、家具、仕上げ等による心地よい空間が、自分が大事にされているという感情とともに、前向きな気持ちを生み出すようにする」と解説した。
報告書の全文は、同研究所のホームページで確認できる。