スポーツ庁と経産省が共同で設置している有識者会議「スポーツ未来開拓会議」は5日、東京オリンピック・パラリンピック後のスポーツ振興や関連産業の活性化に向けた中間報告を公表した。少子化などの影響で子どもの運動機会が減少する中、スポーツ少年団や学校といった既存の担い手だけではなく、民間企業などのスポーツ産業も巻き込む形で地域スポーツの環境整備を進める必要性を指摘。そのために必要な取り組みとして、体育館や校庭などの学校施設の利用を民間企業にも認めていくよう自治体に求めた。
中間報告は、少子化などに伴い、小学生が参加するスポーツ少年団の団員数や中学生・高校生のスポーツ活動の場となっている運動部活動の参加率が低下していることを挙げ、「子どものスポーツ環境をこれまでの形で維持することが困難になってきている」との認識を示した。また、部活動の地域移行の受け皿の一つとして期待されている「総合型地域スポーツクラブ」についても、「地域におけるスポーツの担い手としての役割を担うには財源確保をはじめとした多くの課題が存在する」と指摘した。
子どもたちの運動機会が減少すれば、将来的にスポーツに関わる人が減ることになるため、現状はスポーツ産業にとっても危機的な状況と言える。このため中間報告は、学校や総合型地域スポーツクラブ、スポーツ少年団といった既存の担い手だけでなく、スポーツ産業も加わる形で地域のスポーツ環境を整備し、民間の資金や経営能力、ノウハウなどの活用を検討すべきだとした。将来的に期待される担い手としては、総合型地域スポーツクラブに加え、プロスポーツクラブや企業、大学を例示した。
ただ、スポーツ産業の参画を促すには課題もある。体育館やグラウンドなどの学校施設の使用が制限されていることだ。スポーツ庁によると、国内のスポーツ施設の約6割を学校施設が占める一方、民間企業にこうした施設の利用を認めている自治体は2割未満にとどまっている。学校という公共性の高い施設を、営利目的の団体に開放することに抵抗感があるためだとみられる。
このため中間報告は、「学校施設を有効に活用する方法について、各自治体が早急に検討し、結論を出すことが必要」と指摘。具体的に求められる取り組みとして、民間企業などの活動場所として学校施設の使用を認めることや、学校施設を改修する際に高度化を図ったり、民間施設と複合化したりすることを挙げた。
また、ボランティアに依存してきたこれまでの指導体制では持続可能性を担保できないことから、「有償で業務を担うことを前提として、指導者像について検討を進める」との内容も盛り込んだ。ただ、地域スポーツの有償化が広がり、家庭の経済状況による機会格差が生まれることは好ましくないため、「教育・スポーツクーポン等の可能性を含め、スポーツ機会を保障する方法をその財源と併せて検討する」としている。