東京書籍が高校地図の教科書を廃刊へ 約1200カ所の訂正で物議

東京書籍が高校地図の教科書を廃刊へ 約1200カ所の訂正で物議
iStock.com/Samuil_Levich
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 教科書出版大手「東京書籍」は8月9日、2022年度から高校の地歴・公民科で使用されている地図の教科書について、26年度以降は廃刊すると発表した。この教科書を巡っては、20年度の教科書検定に合格したものの、22年度に学校現場で使用が始まった後、地名などの誤りが多数発覚。約1200カ所の訂正を申請し、異例の再配布を余儀なくされていた。

 同社は小中学校の地図の教科書も発行している。高校の地図を廃刊とする理由について、「その分のリソースを小中学校の教科書の品質向上に振り向けるため」としている。

 問題となったのは22年度に全面実施された高校の新学習指導要領に対応した「新高等地図」。20年度の教科書検定に合格し、22年度は約3万6000冊を発行した。しかし、使用開始直後、高校の教員から誤りがあるとの指摘があり、同社が確認したところ、直近の情報に更新していなかったり、索引が用語の掲載場所を正しく反映していなかったりするなどの欠陥が約1200カ所見つかった。南米の「ドレーク海峡」を「マゼラン海峡」、「西岸海洋性気候」を「西海岸性気候」と誤記するなど、文科省が検定の段階で指摘しておくべき誤りも約20カ所含まれていた。
 
 同社は昨年10月、文科省に訂正を申請。また、今年に入ってから、希望する高校には訂正済みの教科書を再配布する対応を取っている。

 同社は従来から高校の地図の教科書を発行していたが、今回の学習指導要領の改訂に合わせて大幅な見直しを行った。制作の多くの部分を外部の業者に委託していたが、新型コロナウイルスの感染拡大とタイミングが重なり、在宅勤務を余儀なくされた結果、連携や校閲作業が不十分になったのが原因だという。校閲を担う人員の増強を含めた再発防止策をすでに講じている。

 永岡桂子文科相は8月15日の閣議後記者会見で「検定の限られた審査期間の中で、一部の誤記等を指摘し切れなかったことは大変遺憾。引き続き適切な検定審査に努めるとともに、今後このような事態が生じないよう、発行社を強く指導してまいりたい」と述べた。

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