高校教育を巡る課題の洗い出しを続けている中教審の「高等学校教育の在り方ワーキンググループ(WG)」の第9回会合が 8月24日開かれ、これまでの議論を取りまとめた中間まとめ案が公表された。遠隔授業を巡る要件の柔軟化や制度改正を進め、不登校生徒の学習機会を確保するほか、過疎地域の学校で活用しやすくするなど、多様な子どもたちの学習ニーズに応える環境づくりを打ち出した。また不登校生徒を巡っては、不登校特例校以外の全日制や定時制でも、オンデマンド型の通信教育を取り入れられるよう制度改正を求めた。同省では今回の議論を踏まえ、今月中にも中間まとめを公表する方針。
中間まとめ案では、高校教育に求められる側面として、生徒一人一人の個性を大切にした「多様性への対応」と、全ての生徒が社会で生きていくために必要な資質・能力を身に付ける「共通性の確保」を掲げた。その上で、▽少子化が加速する地域における高校の教育の在り方▽全日制・定時制・通信制の望ましい在り方▽社会に開かれた教育課程の実現、探究・文理横断実践的な学びの推進――の3つの論点について、現状の課題と具体的な方策を整理した。
その中で「少子化が加速する地域における高校の教育の在り方」では、過疎地域にある小規模校などで遠隔授業を実施する要件の柔軟化を求めた。具体的には受信側の教員の配置について、▽一定の基準の下、教員に代わる職員を配置できるよう具体的な基準を定めるとともに、要件を弾力化する▽常駐以外の方法により、授業運営や生徒の安全管理上問題のない配置ができるか実証研究をした上で、必要な取り組みを実施する――などと国に要望した。
また「全日制・定時制・通信制の望ましい在り方」では、全日制・定時制課程での不登校生徒の学習機会の確保について言及。遠隔授業の上限である36単位以内で、▽自宅などで同時双方向の遠隔授業の受講を可能とする制度改正を実施する▽不登校特例校の指定がなくとも、オンデマンド型の学習可能な通信教育を活用できるよう整備する――など、柔軟な学習形態の実現を求めた。
WGでは「“生徒を主語にした”高校教育」の実現に向けて昨年秋から議論を重ねており、中間まとめを受けて委員からは、改めて生徒視点に立ち返った意見が上がった。
田村知子主査代理(大阪教育大学連合教職実践研究科教授)は「全体を通して、高校が通過点であり将来の準備期間である印象を受けた。高校生の今現在のウェルビーイングの実現という観点を盛り込んでほしい。学びそのものが子どものウェルビーイングにつながり、かけがえのない高校生活自体を楽しむというニュアンスも必要なのではないか」と提案した。
また今村久美委員(認定NPO法人カタリバ代表理事)も「子どもたちは何者かになるためにタスクをこなして、その結果幸せになるのではない。学びや探究そのものがウェルビーイングという考え方に変えていきたいと、これまでの議論で感じた」と述べた。
一方、沖山栄一委員(東京都立世田谷泉高校長)は「このWGでは『生徒を主語に』と盛んに言ってきたが、今回の中間まとめは生徒を主語にした記述になっているのか。(中間まとめを見たときに)生徒が自分に合わせて仕組みなどを選択し活用して、学びを深めることができる視点を盛り込めるとよかったと思う」と改善点を述べた。
それを受け、荒瀬克己主査(独立行政法人教職員支援機構理事長)は「生徒を主語にする前提条件をどう整えるかが、われわれの議論の中心にあった。この中間まとめを読み、生徒が必ずしもワクワクするとは思わないが、少なくとも生徒がワクワクするような学校生活が実現するきっかけ作りにはなるだろう。今後の議論の中で、それが進んでいるかの確認もしていきたい」と今後の議論の方向性を示した。