高校生や大学生の10人に1人が夏休みの課題に取り組む際、ChatGPTなどの生成AIを活用していた――。日本財団が国内の17~19歳の若者を対象にこのほど実施した調査で、こんな実態が判明した。また、4人中3人は生成AIの登場によって学校や教員の役割が変わると考えていることも明らかになった。
調査は8月19~20日にインターネットを通じて実施し、全国の17~19歳の若者計1000人(男性514人、女性486人)から回答を得た。回答者の約5割が高校生や高等専門学校生、約4割が大学生や短大生、専門学校生だった。
生成AIの認知度や利用状況について「知っていて、使ったことがある」「使ったことはないが、知っている・聞いたことがある」「知らない・聞いたことがない」の3択で尋ねる質問に対しては、361人(36.1%)が「知っていて、使ったことがある」と回答した。「使ったことはないが、知っている・聞いたことがある」が503人(50.3%)と最も多く、「知らない・聞いたことがない」は136人(13.6%)だった。また、「使ったことがある」と答えた比率は男性(41.8%)の方が女性(30.0%)よりも高かった。
また、今年の夏休みの課題や宿題で生成AIを活用しているかを聞いたところ、7.9%が「活用した」と答えた。「まだ取り組んでいないが、活用する予定」(2.5%)も加えると、10人に1人に達した。ただ、「活用していない」(55.3%)と「まだ取り組んでいないが、活用する予定はない」(7.8%)を合わせると3分の2近くに達しており、現状では生成AIに頼らない生徒・学生が圧倒的多数派と言えそうだ。
一方、授業などでの活用状況については、11.2%が「生成AIを活用する授業を受けたことがある」とした。「授業で仕組み・特性やリスクについて学んだことがある」と答えたのは31.8%、「学校や大学で活用ルールが定められている」と答えたのは21.8%だった。
今回の調査では、生成AIの登場によって学校や教員の役割が変わるかどうかも尋ねた。この結果、「特に変わらないと思う」と回答したのは251人(25.1%)にとどまった。
残る749人には具体的にどのように変わるかを最大3つまで選んでもらったところ、「生成AIの使い方・ルールを教える役割」が293人で最も多く、▽「今よりも『考える力』を育む役割」(288人)▽「今よりも『人間関係』や『コミュニケーション』を学ぶ場としての役割」(240人)▽「今よりも『子どもの個性』に合わせた学びの場としての役割」(175人)??と続いた。「AIによる自己学習が中心となり、週1回登校等の補助的な役割を担う」(55人)や「今のような学校や先生はなくなる」(51人)と考える若者は少数派だった。
同財団の担当者は「生成AIについて知っている人が約9割いる一方、夏休み課題に使ったのが1割という結果は、まだ慎重派が多いという印象だ」と指摘。こうした判断をする背景については、「特性やリスクなどを十分に教えてもらえていないという事情もあると考えられる」と語った。また、教員の役割に関しては、「若者の多くはAIをあくまでツールと考えており、先生に教えてもらいたいという期待は引き続き大きいと言える」と分析している。
文科省は7月、初等中等教育段階での生成AIの利用に関するガイドラインを示し、長期休業中の課題などで生成AIを補助的に活用することはあり得るとしつつ、自分の成果物としてそのまま提出することは自分のためにならないことを十分に指導するよう促している。高専や大学についてはガイドラインなどを定めていないものの、生成AIの成果物をそのままレポートなどにすることは基本的には不適切との見解を示している。