中学3年生の生徒が言った言葉です。
正しい情報を伝えて、それをもとに自分の進路や学校復帰をどうするかを主体的に考えて決めることが大切だと気付かされ、私が勤務する適応指導教室では進路学習会を企画しました。学年末の中学1・2年生に向けた進路学習会には、特に力を入れています。まず、不登校であることのハンデも含めて高校の受験制度について説明します。その後、10年後の自分がどんなふうにありたいかを描いた上で、次年度どうするかを決める作文を書いてもらいます。
「希望する高校を受験するために学校に戻る」「適応指導教室で力を付けて、高校から頑張れるようにする」など、一人一人がさまざまな結論にたどり着きます。
この取り組みを始めてから、4月に自ら登校する子どもが増えました。また、再度通級する子も、目的を持って前向きに通うようになりました。自分で決めて、自分で動いた経験は、大きな自信を与えてくれるのだと実感しました。
作文による自己対話は非常に有効だと考えています。傷ついたことを思い出さないように、不登校であるというつらい現実を見ないように、自分の心にふたをしている子どもが多くいます。つらい現実から目を背けていても、現実は変えていけないのです。作文は自己対話を促進して、自己を見つめ直す「自己カウンセリング」の働きをする私の頼もしい相棒となりました。作文が変わると、その子自身も変わっていくからです。
作文による自己対話を続ける中で、「不登校になったのは、学校が悪い、親が悪いと思っていたけれど、本当は自分が弱かった。弱さ故に手放した学校生活を取り戻したい」という結論にたどり着いた子がいました。自分の人生を取り戻したのです。自己対話としての作文を取り入れてから、高校を中退する卒業生も減っています。
作文を通して、自分の課題を見つけた子どもたちは自分自身で歩みだします。そして、自分次第で人生を切り開いていけるという自信を取り戻します。卒業時に、不登校だった中学時代を振り返って「ここまで来たんだな」と言った子がいました。共に歩みながら、子どもの持つ成長への意志を大切に育んでいきたいと思っています。