「人間はつら過ぎるから、次に生まれてくるのなら虫になりたい」
同級生や先生との関係に傷ついて不登校になった生徒が言った言葉です。適応指導教室には「人間関係が苦手」と話す子が数多くいます。長い間家にいることで、外の世界や人が怖くなった子もいます。そのため、まずは人との関係の中で安心感が持てるように、そして「人っていいな」という思いを持てるように支援していきます。以前は、グループ活動や体験活動も、嫌な思いをしないように配慮して行っていました。そうした守られた環境の中で、子どもたちは楽しそうに活動をしていました。
「後輩には温かさと一緒につらさに耐えることも教えてあげて」と卒業生から言われた言葉は、大きな転機になりました。実際の人間関係では、思うようにならないこともたくさんあります。その中で葛藤し、折り合いを付ける力を育む必要があったにもかかわらず、子どもの苦労を横取りしていたのだと反省しました。適応指導教室は「安心な居場所」から「次の段階へのスタート台」へと、一人一人の子どもの、その時々の状態に合わせて役割を変えていく必要があるのだと思うに至りました。
そして、活動を見直しました。キーワードは「さまざまな人と出会う」「型にはまらず発展的である」「子ども主体」「結果ではなく経過を大事にする」です。
大学生との交流は、教室内のワークショップから始まり、子どもの希望で大学探検や学内の田んぼでのプチ農業体験にまで発展しました。大学の自由な雰囲気や大学生の思いや夢に触れて、不登校になって諦めていた大学進学を目指すようになった子もいます。
また、実行委員が中心となって行う子ども主体の活動では、うまくいかずに落ち込んだり、関係が悪化したり、休みがちになったりもしました。そうしたさまざまな苦労を乗り越えて成し遂げたことで自信を付け、「自分の居場所を見つけた」と言った子もいました。居場所は人との確かなつながりの中でできるのだと実感しました。異学年集団での活動の中で、成長を遂げる先輩の姿をモデルにできることも適応指導教室の強みです。
失敗を恐れて、挑戦することに尻込みする子どもが増えているように感じます。適応指導教室を、安心して挑戦し、失敗もできる場所にしたい。そう思っています。