カナダと小田原と徳島つなぐ 「同じと違いを知る」オンライン授業

カナダと小田原と徳島つなぐ 「同じと違いを知る」オンライン授業
ロッキーさんに質問する新玉小学校の子どもたち
【協賛企画】
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 水をテーマに、カナダと神奈川県小田原市立新玉小学校(岩田真由美校長、児童144人)、徳島県徳島市立福島小学校(寺井孝文校長、児童419人)をオンラインでつないだ授業が、9月21日に行われた。カナダ在住のネーチャーガイドの田中康一さんが、社会科で水について学んでいる両校の4年生に同国の水事情をレクチャー。子どもたちはロッキー山脈を流れるボウ川の水の色がターコイズブルーであることに驚いたり、氷河が溶けだして生活水になっていることなど、日本との違いについて真剣にメモを取ったり、質問したりしていた。

 両校の4年生は社会科の水の単元で浄水場を訪れたほか、下水処理場の仕組みを学ぶなどしてきた。この日は単元の発展的な学びとして、カナダ・アルバータ州にあるバンフ国立公園でネーチャーガイドを務める田中さん(通称ロッキーさん)が、映像や写真、データを使いながらカナダの水事情を子どもたちに紹介した。

 ロッキーさんは、コロナ禍をきっかけに日本各地の子どもたちにさまざまなテーマでオンライン授業を行っている。口コミなどでその授業が評判となり、この日でオンライン授業は109回目を数える。両校の4年生は、6月にも社会科のごみの単元でロッキーさんとオンライン授業を実施しており、その時以来の再会。ロッキーさんが画面上に現れると、子どもたちはうれしそうに手を振りながら呼び掛けていた。

 授業の冒頭、ロッキーさんはカナダにも浄水場や下水処理場があり、水を循環する仕組みは日本と同じだと説明。続いて、ロッキー山脈を流れるボウ川の写真が映し出されると、新玉小学校の子どもたちは「近くの酒匂川と水の色が全然違う! カナダの川の水は青いんだ」と、その違いにびっくりした様子。「人が少ないから水がきれいなんじゃないかな?」などと、理由を考える児童もいた。

 「雨と雪はとても大切だが、カナダも日本と同じように温暖化が進んでいて、雨の降る量が変わってきたり、雪が降らなくなったりするなど、困ったことが起きている」とロッキーさん。特に、ロッキーさんが住むバンフはカナダの中でも雨や雪が少ない場所で、年間降水量が小田原市の半分以下だというグラフが示された。

 「バンフは雨が少ないから、ボウ川の水がとても重要になってくる。では、そもそもボウ川の水ってどこから来ていると思う?」とロッキーさんが問い掛けると、子どもたちは「森かな?」「山からじゃない?」と予想を立てる。「実はボウ川の水は、氷河が溶けだしたもの。日本にはないけれども、カナダにはたくさん氷河があるんだよ。氷河がなければ、私の住んでいる地域は生活できなくなってしまう」と映像を交えながら説明すると、子どもたちからは驚きの声が上がった。

 最後に、ロッキーさんが「みんなの近くの川の水は、最終的にはどこに行くのかな?」と質問すると、子どもたちは「海」と即答。小田原市を流れる酒匂川も、徳島県を流れる吉野川も太平洋につながっていることに子どもたちが気付くと、「ロッキー山脈は水の滑り台のようになっていて、そこを流れる川は、最終的には大西洋と太平洋につながっている。つまり、みんなの近くの川の水ともつながっている」と話した。

 カナダと日本の共通点と違いを学んだ子どもたちは、ロッキーさんにさまざまな質問を投げ掛けた。福島小学校の児童は「氷河が全部なくなると、どうなっちゃうの?」と質問。ロッキーさんは「もし、氷河が全部溶けてしまったら、海の水がどんどん増えてしまう。それで幸せになる人はいない」と回答。「温暖化が進むと、氷河はさらに溶けてしまう。とても怖いことだよね。そうならないためにはどうしたらいいのか、それぞれが考えてみてほしい」と子どもたちに語り掛けた。

 授業後、両校の子どもたちからは「ロッキーさんが住んでいるところは、氷河が溶けて水になっていることにとても驚いた」「どの国も地球温暖化に悩まされている」「国によって景色がびっくりするぐらい違う」「さらにカナダに興味が湧いた」などの感想が上がっており、新玉小学校の4年生の担任でこの授業を企画した渡辺まき子総括教諭は「子どもたちの視野が広がっている」と笑顔を見せる。

 6月のごみの授業では、徳島県の上勝町とカナダのごみ事情を学んだ子どもたちが「他の国はどうなんだろう?」と興味を持ち、後日、実際に別の国のごみ事情を調べてきた児童もいたという。オンラインで他校や他国とつなぐ授業の良さについて「今、この瞬間に、世界中には自分たちの生活とは違う生活をしている人がいることを知れる。それを体感できるのは、とても大きい」と話す。

 これまで海外と日本のそれぞれの良さを意識しながらオンライン授業を行ってきたロッキーさんは、「子どもたちには俯瞰して見るヒントを得てほしいと思っている。違いを楽しめる、幅の広い思考と視野を持って学んでいってくれたら」と期待を込めた。

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