生成AIの普及踏まえ 教育情報化推進計画を一部見直しへ

生成AIの普及踏まえ 教育情報化推進計画を一部見直しへ
学校教育情報化推進計画の策定3年後の見直しの検討作業に入ったデジタル学習基盤特別委員会=オンラインで取材
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 学校教育の情報化の施策の方向性を示した「学校教育情報化推進計画」について、中教審のデジタル学習基盤特別委員会は9月8日に開かれた第8回会合で、策定3年後の見直しに向けた検討作業に着手した。現行の計画が策定されてから生成AIが社会で急速に普及してきた状況などを反映し、今年度中をめどに必要な施策のアップデートなどを行う。

 学校教育情報化推進計画は2019年6月に成立した「学校教育の情報化の推進に関する法律」に基づいて策定されているもので、教育の情報化に関して国の施策の方向性やロードマップが描かれており、各自治体が学校教育情報化推進計画を策定する際に参考にする側面もある。現行の計画は22年12月に策定され、今後5年間に取り組むべき施策の方向性をまとめているが、ICT分野は技術革新が速いことから、策定から3年後をめどに見直しを行うことが規定されている。

 この策定3年後の見直しのタイミングが近づいていることから、デジタル学習基盤特別委員会では今年度中をめどに見直しの検討を行うことにした。

 文部科学省はこの日の会合で、現行の計画が掲げている▽ICTを活用した児童生徒の資質・能力の育成▽ICTを活用するための環境の整備▽教職員のICT活用指導力の向上と人材の確保▽ICT推進体制の整備と校務の改善――の4つの観点は引き続き重要だと強調。策定3年後の見直しでは、基本的な方針は堅持した上で、現行の計画の策定以降も学校現場のICT環境の整備やICTの利活用の定着が一層進んだことや、世の中で生成AIが急速に普及したことなどを踏まえて、現状認識や必要な施策を改めていく方向性を提示した。

 この方向性について利根川裕太委員(みんなのコード理事会長/横浜美術大学客員教授)は「基本的な方針は堅持するということだが、生成AIの観点からは違和感を覚えた。(生成AIについて)どういうメッセージになるかが気になる」と指摘。学校現場の生成AIの活用状況を分析し、見直しに生かすべきだとした。

 奈須正裕委員長代理(上智大学総合人間科学部教授)は、生成AIの普及によって、例えば英語の翻訳や国語の作文などの教育が変わるかもしれないとの認識を示した上で「これまでの学校教育の情報化を進めるのではなくて、情報化されていく社会が何かというのを見据えることと、その中で教育がただ追随するのではなく、本質的なところとしての教育の機能とは何かをしっかりと考えなければいけない」と話した。

 

【キーワード】

生成AI 学習したデータを使ってテキストや画像、プログラムなどのコンテンツをつくることができるAI(人工知能)。学校現場でも授業や校務などで活用が広がりつつあるが、さまざまな留意点もあり、文部科学省では初等中等教育段階での生成AIの利活用に関してガイドラインを定めている。

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