さまざまな運動・スポーツの安全確保対策を議論しているスポーツ庁の検討会は9月8日、都内で第3回会合を開き、運動・スポーツ関係者が科学的知見に基づく安全対策の評価・改善をできるようにするガイドライン案のイメージが示された。ガイドライン案には、個人としての対応、指導者側の対応、組織的対応、ハード対策に共通して、必要な留意事項の一つに成長期の子どもへの対応を入れることが提案された。
運動・スポーツに関わる施設や組織、個人の安全対策を巡っては、これまで子どもの育成や消費者保護などの観点からの取り組みは行われているものの、運動・スポーツの科学的知見の観点からの対応は十分とは言えなかった。そこで検討会では、多様な運動・スポーツの関係者が科学的知見に基づいて安全対策の評価・改善を行えるガイドラインを国が示し、安全対策を支援する手引として活用する方針を打ち出していた。
この日の会合で示されたガイドライン案では、特定の競技などに限定せず運動・スポーツ全体に共通するものとしてガイドラインを位置付け、取り組みを①個人としての対応(運動・スポーツの実施において必要となる対策)②指導側の対応(指導者による対策)③組織的対応(大会・イベントなどの主催者による対策および運動・スポーツ活動の運営主体による対策)④ハード対策(運動・スポーツ関連施設の設置・運営者による対策)――の4つに類型化。死亡事故や重篤な事故の発生が多いケースに留意しつつまとめ、成長期の子どもや障害者への対応など、共通して必要な留意事項を盛り込む考えを示した。
安全対策の評価・改善項目も列挙され、熱中症や落雷事故の防止、オーバーユーズによるけがや障害の予防、指導者による暴力・ハラスメント行為の防止、学校・保育施設に設けられた運動設備に関する留意点などが盛り込まれた。
このガイドライン案について祐末ひとみ構成員(神戸親和大学教育学部講師)は「暴力やハラスメントは一方向だけで起きるものではない。指導者の責務が増えていく中で、指導者の安全・安心も含めてもらえたら、安心して関わったり、指導現場に行けたりするので、ぜひ指導者を守る観点もあるとよい」と提案した。
小菅司構成員(日本スポーツ施設協会専務理事)は、運動・スポーツ関連施設の設置・運営者の対策について「施設の設置・運営者は学校も含まれる。わが国のスポーツ施設の全体の6割が学校体育施設と言われている。教師自らあるいは設置者自らが(対策をする)というのは難しいと思う。(対策を)代わりにやってくれる人的措置が必要になってくる」と話した。
笠原政志構成員(国際武道大学教授/日本アスレティックトレーニング学会副代表理事)は、中学校における部活動の地域展開を視野に「学校(で行われる部活動)であれば指導者と養護教諭が安全管理をつかさどる体制があるが、地域に部活動展開したときに、養護教諭に当たる人は誰になるのか。指導者が全てワンストップで担うのは酷だと感じる。スポーツに特化して安全管理を担う人材が必要になる」と指摘した。
【キーワード】
オーバーユーズ 運動・スポーツにおける身体の使い過ぎ。オーバーユースともいう。長く同じスポーツを続けた結果、身体の部位の一部に過度な負担が生じて起きるスポーツ障害の原因ともなる。スポーツ障害は成人やスポーツ選手だけでなく、成長期の子どもにもよく起きる。