「不登校のあの時期があったから、今の自分がいる」
多くの卒業生が口にする言葉です。このように振り返ることができたら、不登校であった時間をその子にとって意味のあるものにすることができます。進学や就職の報告、結婚や出産の報告、困った事や悩み事の相談…。適応指導教室を巣立った後も、折々に卒業生が顔を出します。それぞれがそれぞれの道を歩んでいます。
20年以上、適応指導教室で不登校支援を続けてきましたが、不登校の子どもたちの状態像や、社会の不登校に対する考え方は変化し続けているように感じます。その時々、一人一人の子どもにとって必要なことを共に歩みながら考えていく。その積み重ねが、結果として適応指導教室の改革につながったのだと思います。未来に向けて不登校支援を考え、不登校をその子にとって成長の機会にできるようにしたいという思いは、ずっと持ち続けてきました。
2021(令和3)年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(文科省)によると、教育支援センター(適応指導教室)を活用した児童生徒は国公私立計で全体の10.3%です。決して多い数字ではありません。一方で、学校内外で相談・指導を受けていない児童生徒は国公私立計で36.3%に上ります。
適応指導教室は現在も非常勤職員の割合が高く、知見の蓄積が不足していると感じます。効果的な支援・指導の方法を共有し、確立していくことが必要です。
フリースクールなど、不登校の子どもの居場所の選択肢が増えたのはとても良いことだと思います。しかし、経済的な事情に関係なく、全ての子どもが利用できる公的な支援の充実は必要不可欠です。不登校支援に当たる人材の育成も課題だと考えます。適応指導教室で多くの不登校の子どもと関わる中で、居場所は確かなつながりが実感できたときに得られるのだと思うに至っているからです。居場所は人がつくるのです。
不登校の問題と考えると解決が難しいように思いますが、目の前の子どものより良い成長を支えることだと考えたら、できることはたくさんあります。居場所から次のステップへのスタート台まで。適応指導教室は可能性や希望に満ちた場所だと確信しています。
(おわり)