コロナ禍で外食ができなくなった時、飲食店の店先に「お持ち帰りできます」という貼り紙があるのを見掛けた。「お持ち帰りになれます」ではないかと思いながらも、確認することもなく過ごしてきた。駅でも「次の電車にご乗車できます」というようなアナウンスを聞くようになるなど、さまざまな所で「〇〇できます」表現が使われ、市民権を得たように感じる。
2022年度「国語に関する世論調査」の結果が文化庁から発表された。「見聞きした言葉の使い方が間違いや勘違いだと思ったら、どのようにするのが好ましいと思うか」という設問に、5割以上、特に20~40代では7割近くが「本当に間違いや勘違いなのか調べる」と回答していた。予想以上に多くの人が調べようとしている。
問題は「言葉の使い方が間違いや勘違いだ」と感じるかどうかである。多くの人が誤った使い方をしていれば間違いや勘違いとは感じず、調べようとはしないだろう。「言葉や言葉の使い方に大きな影響を与えるのは何か」では、9割近くが「テレビ」と回答。テレビが誤った言葉の使い方で伝えれば、多くの人に影響を及ぼすことになる。
芸能人が取材に応じて「このたび入籍させていただくことになりました」という場面をよく見掛ける。「させていただく」という表現も何回も放映されれば、丁寧で正しい表現として認識されるだろう。
テレビでは最近、話し手がいわゆる「ら抜き言葉」で話していても、正しい表現でテロップを流しているのを目にする。このような工夫を広げることができないものだろうか。