【PISA調査】生徒の自信なさ「文化的背景も」 東大でシンポ

【PISA調査】生徒の自信なさ「文化的背景も」 東大でシンポ
多くの教育関係者が集まったシンポジウム=撮影:大久保昂
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 OECD(経済協力開発機構)が2022年に実施した国際学習到達度調査(PISA)の結果が公表された(参照記事:【PISA調査】日本は全3分野で世界トップ級 読解力が急回復)ことを受け、日本を含めたアジア諸国の特徴や課題について考えるシンポジウムが12月6日、東京都文京区の東京大で開催された。日本の子どもたちが自信を持てなかったり、不安を抱えていたりする傾向が示されたことについて、「文化的背景を理解した上での解釈が必要だ」との指摘が出るなど、国内外の専門家や教育関係者がアジアの子どもたちの未来について話し合った。

 同大の鈴木寛教授(元文科副大臣)が代表を務める同大公共政策大学院ウェルビーイング研究ユニットが主催し、OECD教育スキル局と一般財団法人三菱みらい育成財団が共催した。会場の様子はオンラインでも同時配信した。

 イベントではまず、OECD教育スキル局就学前・学校教育課長の小原ベルファリゆり氏が登壇し、今回のPISAの結果について説明した。全体的な得点について「グローバルでは下降傾向にある」としつつ、日本などを念頭に「いくつかの東アジアの国・地域は素晴らしい学習到達度を示した」と述べた。また、日本と比べて生徒の学習時間が短い国の中にも、遜色のない成績を残している国があるとして、「学習に費やした時間だけではなく、質が重要だ」と指摘した。

 世界の教育現場でデジタル端末の活用が広がる中、学校における端末の利用時間と学力の関連性にも言及した。遊びで長時間使っている生徒は、得点が大きく落ち込む傾向がみられたことを紹介し、「端末をどう管理し、どう目的を持って使うようにするかが大事だ」と述べた。

 続いて、「次世代を担う生徒の学び」と「生徒のウェルビーイング」という2つのテーマでパネルディスカッションを行った。海外からのオンライン参加者も交えながら、国内外の教育関係者や専門家が意見を述べ合った。

意見を交わすパネリストたち=撮影:大久保昂
意見を交わすパネリストたち=撮影:大久保昂

 生徒の学びをテーマとしたシンポジウムでは、新型コロナウイルスの感染拡大期に岡山県の公立中学校で校長を務めていた床勝信氏が、2020年の全国一斉休校への対応などを振り返り、「(今回のPISAで)学力が下がっていないというのは非常にうれしかった」と語った。一方、数学を専門とする床氏は、現在の小中学校の授業について「教員が形式的なやり方だけを教えており、算数・数学の楽しさがどこか失われている」との課題認識も示した。

 数学者で東北大教授の小谷元子氏は「数学の理解は線形に伸びていくわけではなく、ジャンプする地点がある」と指摘。「時間的な制約や受験に対する期待もある中、どこまで生徒の発見の喜びを待つことができるか。教員にとって大きなチャレンジになる」と語った。

 ウェルビーイングに関するシンポジウムには、中教審の委員を務める内田由紀子・京都大教授らが参加した。内田氏は、今回のPISAの結果、日本の子どもたちが自信を持てなかったり、不安を抱えていたりする傾向が示されたことについて、「自己肯定感や満足感といった指標は、北米やヨーロッパの一部にみられる『自信を持つことがアドバンテージとなる国』と相性がいい。文化的背景を理解した上での解釈が必要だ」と指摘した。その上で、日本は家族や友達とのつながりといった要素や、教職員まで含めた「学校という場のウェルビーイング」を大切にすべきとの考えを示した。

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