先日、ある中学校の周年記念式典に出席した。第2部で生徒と出席者が共に参加する記念講演が行われた。講師はその学校の卒業生で歌人であり絵本作家である方だった。
事前に全校生徒が開校についての思いや日々の学校生活などについてコンテスト形式で短歌を詠み、講師がえりすぐりの数点についてコメントしていた。その後、代表の生徒が講師に、中学校時代の思い出や歌人になったきっかけなど質問しながら対談形式で和やかに進められた。生徒主体の趣向が凝らされた企画に新鮮味を覚えた。
印象に残った生徒たちの短歌の中には、「祖母あるき 母もあるいた 通学路 変わりゆく景色 変わらぬ校歌」「改修で 足場遮る 窓の外 継がれる軌跡 古希の学び舎」「『またあした』 言ったつもりが 話しだし 気づけば今日も 君の影ふむ」という作品があった。生徒の感性の豊かさに心打たれた。
中学校学習指導要領で、「感性」について触れているのは音楽と美術の目標の部分だけだ。子供たちの感性は、授業時間だけではなく、子供同士、保護者、地域や教師との関わりやさまざまな体験活動を通して育まれる。日々、学校生活のさまざまな場面で、教師が意図的に子供の心に働き掛け、言語化させたり、文章化させたりすることを通して自分自身を表現させ、それを肯定的に受け入れる積み重ねが大切である。
現在、学校では個別最適な学びや協働的な学び、ICTを活用した学びが重視されているが、改めてそれ以前に忘れてはいけないものに触れたような気がした。